社会性と経済性を両立できるのか?静岡で実践する2日間のマーケティングブートキャンプ【2025.09.20-21_社会性と経済性を両立する合宿〜地域における文化経済戦略について〜】
- 森勇人

- 9月26日
- 読了時間: 8分
更新日:10月11日

HONEインターン生の森です。
9月20日〜21日、「社会性と経済性を両立する合宿〜地域における文化経済戦略について〜」の2日間のマーケティングブートキャンプが開催されました。舞台は静岡市が運営する「コ・クリエーションスペース」と、人とまちをつなぐ場「ヒトヤドホール」。
「社会課題の解決」と「経済的な持続可能性」は両立できるのか。誰もが一度は考えながらも、なかなか明確な答えを見つけられないこの問いに、真正面から向き合いました。
講師は、地方マーケティングと文化経済戦略を専門とする株式会社HONE代表の桜井貴⽃。実践的なフレームを実地で学びながら、地域を舞台に、「自分らしい起業の視点」が見つかる機会になりました。
ぜひ最後までご覧ください。
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目次
登壇・主催・運営について
GHILフレーム
フィールドワーク
GHILフレーム→VRIO分析へ
CSVフレーム
コンセプト設計
ロジックモデル
自分らしい起業の視点を得る
個人的な反省
登壇者・主催・運営について
講師:桜井貴斗

株式会社HONE代表取締役。2021年に独立し、現在は「地方に骨のあるマーケティングを実装する」をミッションに掲げ、地域のブランディングや事業支援を行っています。地方に根ざした文化や伝統を大切にしながら、マーケティングの力で地域の魅力を可視化し、次世代につなげていくことを重視しています。
主催:静岡市

静岡市では、令和5年度より革新的なアイデアや技術などを持つスタートアップ企業を創出するため、学生を中心としたアントレプレナーシップの醸成や、起業家やスタートアップで活躍する人材に必要な資質・スキル等を学ぶ機会を提供しております。
運営:EXPACT株式会社

EXPACT株式会社は、静岡県を中心にスタートアップの成長を多角的に支援しています。特に、地方発のスタートアップ支援に力を入れ、学生起業支援プログラムなどの運営も行っています。
1日目:地域を歩き、資源を「発見」する
初日は、地域資源を洗い出すためのGHILフレームを学び、実際にフィールドワークに出て、多様な人に話を聞きながら課題を整理しました。
夕方からは地域の食事を囲みながら意見を交わし、その後のワークショップでVRIO分析を実践。地域の強みをどのように事業に活かせるかを考え、社会性と経済性を両立する企画づくりの第一歩を踏み出しました。
GHILフレーム

最初の講義テーマは地域資源を見つけ整理する「GHILフレーム」です。GHILフレームとは、
Geography(地理)
History(歴史)
Industry(産業)
Life(生活)
の頭文字を取ったもので、地域資源を4つの視点で整理する手法になります。
こうした地域の資源や課題を把握する際のポイントは「あらゆるステークホルダーに聞くこと」です。住民だけでなく、役場職員や学校の先生、商店主など立場の異なる人々にヒアリングすることで、表面的には見えにくい資源やニーズを発見できます。
多様な視点を集めることが、地域の真の強みや潜在的課題を明らかにし、実効性のある企画立案につながるのです。そして、発見した資源をGHILの4項目で着眼して整理します 。

そこから、
Q-GHIL分析(量と質で評価する)
C-GHIL分析(それぞれの項目を掛け合わせる)
アナロジー(他地域との比較)
といった手法で地域資源を「編集」し、地域の魅力を表現するコンセプトを導き出します。
このプロセスを通じて、単なるデータ収集にとどまらず、地域ならではの価値を創造し、それを具体的な活動施策へと繋げるための戦略を立てることができます。
静岡街中をフィールドワーク

フィールドワークでは、商店街を歩きながら、それぞれの視点で資源や課題を見つけていきます。静岡市のメインストリートである呉服町通りでは、賃料の高さから空きテナントが増えていることに加えて、”静岡らしいお店”が少なくなっていました。

夕食もまた“学び”の一環。チェーン店ではなく地元食材を使った店を開拓することが課題でした。皆さん食事やお酒を楽しみながら、地域に根ざす産業と暮らしを体感できた様子でした。
GHILフレーム→VRIO分析へ

夜のワークショップでは、昼間に集めた資源を付箋に書き出し、GHILマップを作成。その後は「VRIO分析」に進みました。
VRIO分析は、企業が持つ経営資源の競争優位性を評価するためのフレームワークであり、企業独自の強みを活かして競合に対する優位性を築く手段として有効です。
Value(価値)
Rarity(希少性)
Inimitability(模倣困難性)
Organization(組織)
の4観点から資源を評価するフレームになります。静岡市の用宗地区の資源である「シラス漁」を例にすると、

価値(観光資源としての魅力)
希少性(他地域にはない歴史ある漁法)
模倣困難性(300年培われた技術)
組織(漁協や地元住民の協働体制)
といった点で強みを持ちます。
単なる資源の発見から、ビジネスに結びつく「競争優位性」へと整理されていくプロセスは目から鱗でした。
2日目:社会性と経済性の“接点”を探る
翌朝は前日の振り返りから始まり、続いて「CSVフレーム」「コンセプト設計」「ロジックモデル」についての講義が行われました。
CSVフレーム

CSV(Creating Shared Value)は、社会課題と経済的利益を同時に追求する考え方です。
桜井さんは「社会に良いことと、ビジネスとしての利益は必ずしも対立しません。むしろ共通価値を生み出す視点が、持続可能性を高めます。」と説明しました。
具体例として、静岡市の用宗地区では、日帰り客中心で夜経済が限定的であることや、オフシーズンの閑散といった社会課題があげられました。それに対して、ワーケーションや週末移住の需要などの経済機会をマッチさせます。

さらに、行政や民間などのステークホルダーとの共創を考え、空き家改装や観光体験などの、具体的なプランに落とし込みを考えていきます。
参加者は、前日のフィールドワークで得た課題をCSVの観点から再構築し、「どのような社会課題があり、それに対してどのような経済的機会が存在するか」を考え直しました。
コンセプト設計

「コンセプト設計」は、GHILやVRIOで洗い出した地域資源を、誰もが理解しやすい言葉に翻訳するプロセスです。
機能するコンセプトの4条件
①「顧客視点」で書けているか
②「ならでは」の発想はあるか
③「スケール」は見込めるか
④「シンプル」な言葉になっているか
例として挙げられたのが「白Tを男の正装に」というコピーです。たった7文字ながら、「シンプルなTシャツを特別な存在に変える」という世界観が瞬時に伝わります。

単なるキャッチコピーではなく、服飾ブランドの方向性やターゲット顧客像を一気に定義してしまう力を持ちます。参加者たちもこの事例をヒントに、自分たちの企画を短い言葉に圧縮する練習を重ねました。
ロジックモデル

ロジックモデルとは、活動がどのように成果へと結びつくかを論理的に整理する枠組みです。
インプット(資源)
活動(取り組み)
アウトプット(成果物)
アウトカム(短期・中期の変化)
最終アウトカム(長期的なゴール)
この流れで構成されます。
より詳しい情報はこちらをご覧ください。
合宿では、「ダイエット」を題材に説明されました。最終アウトカムとして示されたのが「モテる」です。それに対して、何が必要かを考えていきます。これは一見冗談のように見えますが、実は重要なポイントです。最終アウトカムは個人や組織にとって“本当に達成したいゴール”を明確にする役割を持っています。
このようにロジックモデルは、行動の積み重ねが最終的に何を生み出すのかを可視化し、途中で迷わないための地図として機能します。参加者は、最終アウトカムを考え、そこから逆算して何が必要かを考え、フレームを作成していきました。
自分らしい起業の視点を得る

最後に、参加者は街を歩いて感じた課題や、魅力を分析して事業を考え、ピッチを行いました。皆さんの事業案を聞いて感じたのは、「社会課題と経済性の両立は抽象的な理想論ではなく、フレームと実践を通して具体的に設計できる」ということでした。
静岡という地域を題材に、現場を歩き、人と話し、企画をつくり、発表する。その一連のプロセスを体験したからこそ、「自分が地域にどう関わるか」という問いが現実味を帯びました。
「社会に役立つことを仕事にしたい。でも収入の不安もある。」という迷いを抱える人にとって、本ブートキャンプは確かな道しるべになったと思います。
個人的な反省
インターン生のもーりーです。私もこの2日間のブートキャンプに参加しました。1日目は徹夜で資料を作成するほど取り組みましたが、結局自分が何をしたいのか見えなくなってしまい、最後までアウトプットを出すことができませんでした。その不甲斐なさは今も胸に残っています。数日経った今でも正直気持ちを切り替えられずにいますが、この葛藤も自分にとって大切なプロセスだと思います。苦しみ続けながらも、少しずつ強くなっていけたらと考えています。
HONEについて
HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
桜井がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだ「3つのサービスプラン」をご用意しており、お悩みや解決したい課題に合わせてサービスを組んでいます。ご興味のある方は、ご検討いただければと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
インターン/マーケター見習い 森勇人
静岡生まれ、静岡育ち。 大学3年次、1年の休学をして全国36都府県を巡る。山形県西川町では3ヶ月の地域おこし協力隊インターンを経験。 復学後、ご縁があり株式会社HONEにてインターン/マーケター見習いとして奮闘中。









