<地方中小企業のためのブランドデザインガイドライン策定ガイド>2025年大阪・関西万博2025から学ぶ
- 桜井 貴斗
- 2 日前
- 読了時間: 12分

2025年5月、大阪・関西万博2025に行ってきました!
不思議だったのは、眼前の景色や各パビリオンでの体験すべてに「いのち」を感じられたことです。この背景には、大阪・関西万博2025のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」と、綿密に設計されたガイドラインが機能しているからだと、現地で確信しました。
中小企業でブランドガイドラインを策定する場面は少ないかもしれません。ですが、ブレない事業運営を実現する上で、ステークホルダーの意思統一のためにこのガイドラインは有効です。
今回、万博のブランドガイドラインを参考に、地方中小企業がブランドの一貫性をもたせる策定方法を考えてみました。
目次
新たな市場への進出や事業拡大を計画しているとき
組織内でのブランド認識にばらつきが見られるとき
デザインやコミュニケーションの統一性が求められるとき
企業の方向性を見直すとき
1.ブランドコンセプト(ブランドの核となる哲学)
2.ビジュアルアイデンティティ(ロゴ、カラー、書体など)
3.トーン&マナー(言葉遣い・表現ルール)
4.キャラクター・IPの使用ガイドライン
5.製品に込めた思想やこだわりの伝え方
6.デジタル・SNS・プロモーションでの活用指針
7.ブランドの世界観を伝える
大阪万博から学ぶブランドコンセプトとガイドラインの有効性
大阪・関西万博2025のロゴや、公式キャラクター「ミャクミャク」のデザインは、ブランドコンセプト「Circulation of Lives(いのちの循環)」を具現化するデザインシステムが採用されています。
みなさんもこの青、赤、グレーの色使いと、細胞分裂を思わせる動的な形を見れば、「大阪・関西万博2025」が思い浮かぶのではないでしょうか。
大阪・関西万博2025のデザインガイドラインはウェブ上でも公開され、万博に関わる様々な媒体での表現を統一し、一貫したメッセージを発信するよう示しています。
このようなブランドガイドラインの存在が、文化や思想が異なる各国のパビリオンや、万博関連の広告、コラボレーションに統一感をもたせ、「大阪・関西万博2025」として強い印象を与えているのです。
地方中小企業におけるガイドライン策定のタイミング
大手企業でなくとも、ブランドガイドラインを設定しておくと良いタイミングがあります。地方の中小企業がブランドガイドラインを策定する最適なタイミングは、事業の成長や変革の節目です。具体的には、以下のような状況が該当します。
新たな市場への進出や事業拡大を計画しているとき
新規市場への参入や事業の拡大を図るには、一貫性のあるブランド訴求が重要です。ブランドガイドラインにより、企業のビジョンや価値観がブレることなく、社内外でのコミュニケーションを統一し、新たな市場でも一貫性のある発信ができます。
組織内でのブランド認識にばらつきが見られるとき
企業の成長とともに関係者が増えるほど、ブランドに対する認識や理解に差が生じがちです。ブランドガイドラインがあれば、関係者間の認識をそろえやすくなります。
デザインやコミュニケーションの統一性が求められるとき
ロゴ、カラー、フォント、トーン&マナーなど、ブランドの視覚的および言語的要素が統一されていない場合、顧客への印象も薄くなります。これも、関係者の数が増えるほどぶれてしまいがちな要素です。
企業の方向性を見直すとき
企業の方向性やビジョンを見直す際には、ブランドの再定義が必要となります。このタイミングでブランドガイドラインを策定することで、新たなブランド戦略を明確にし、社内外に効果的に伝えることができます。
ブランドガイドライン策定は、企業の成長、変革のタイミングで、視座を揃えるために行うと覚えていただくと良いと思います。
ブランドガイドラインの7要素:策定のポイント
HONEでもブランドガイドライン策定をお手伝いする機会があり、これまでのご支援を踏まえてフレームワークにしてみました。
ブランドガイドラインで必要な7項目と、各項目について検討すべき点を質問形式でまとめています。ブランドガイドラインづくりの一歩にご活用ください。
1. ブランドコンセプト(ブランドの核となる哲学)
ブランドコンセプトとは、ブランドの核となる哲学であり、すべてのデザインやメッセージの土台となります。大阪・関西万博2025では「Circulation of Lives いのちの循環」という文言です。
大阪・関西万博2025のデザインシステムが表現しているのは、「はじまりも終わりもない時と、いのちの流れ」です。 私たちの日々を彩る多様な生は、ひとつの中心をつくるのではなく、あるときはつながり、あるときは離ればなれになりながら、決して画一化されることのない「いのちの輝き」を教えてくれます。 出典:デザインシステム | EXPO 2025 大阪・関西万博2025公式Webサイト
コンセプトは、自社ブランドの存在意義や世界観を一言で表します。以下の質問に答えてみてください。
質問
私たちのブランドが存在する根本的な目的(Why)は何か?社会や顧客にどんな価値を提供したいのか?
ブランドの世界観や信念をひと言で表すとしたら何か?それは人々の心に響くストーリーになっているか?
このコンセプトは10年後、20年後も色あせない普遍性を持っているか?次世代にも共感されるか?
社内外の人がこのブランドコンセプトを聞いたとき、明確なイメージや感情が想起されるか?
2. ビジュアルアイデンティティ(ロゴ、カラー、書体など)
ビジュアルアイデンティティは、ロゴマークやカラー、タイポグラフィ(書体)といった視覚要素によってブランドを表現するルールです。ブランドコンセプトを視覚に落とし込んだものと言えます。
大阪・関西万博2025の赤・青・グレーの色指定、フォント(書体)、デザインの細かな指定は、印刷物、映像、グッズ、パビリオンでの体験に至るまで、どの媒体でもブレない視覚表現をするために設定されているのです。
自社ロゴや商品ロゴに対し、以下の質問に答えてみると、現状分析に役立ちます。
質問
我々のロゴはブランドコンセプトを体現しているか?色や形状に込めた意味は明確か?
ブランドカラーはどのような感情や印象を与えるか?競合と差別化でき、視認性や可読性は十分か?
書体やレイアウトのルールは統一されているか?印刷物からWeb・モバイルまで一貫したタイポグラフィガイドがあるか?
異なる背景色やサイズでロゴを使用する場合のガイドラインは?最小サイズや余白のルールは設定しているか?
静的なロゴだけでなく、アニメーションやインタラクティブな場での動的な表現(モーショングラフィックスなど)の規定はあるか?
3. トーン&マナー(言葉遣い・表現ルール)
トーン&マナーはブランドの言語的な表現スタイルやコミュニケーション上の態度を指し、いわばブランドの「声」や人格です。視覚面だけでなく、文章やコピー、口調に至るまで統一することで、どんなチャネルでも「そのブランドらしさ」を感じさせることができます。
大阪・関西万博2025の、メッセージ付きロゴマークの使用方法に関するガイダンスでは、ブランドを誤用される可能性から保護するために設定されています。細やかな言葉遣いも、ブランドらしさを表現する要素のひとつです。
質問
私たちのブランドを人に例えるとどんな性格か?それを表す口調や語彙の特徴は何か?
文章を書く際の一人称・二人称はどうするか?
例:「当社」「私たち」 or ブランド名など
顧客への呼びかけ方は『〜してください』と丁寧にするか、『〜しよう!』などフランクにするか?
各種媒体(WEBサイト、SNS投稿、プレスリリース、店頭POPなど)でトーンがぶれていないか?すべて共通のガイドラインでチェックできるか?
4. キャラクター・IPの使用ガイドライン
キャラクターやIP(知的財産)の使用ガイドラインは、ブランドが保有する公式キャラクターやマスコット、ロゴマークの二次利用などに関するルールです。例えば、キャラクターのカラーや形状比率を変えてはいけない、一定の余白を確保する、シチュエーションごとにNGな使い方(不適切な文脈での利用禁止)を定める、といった内容です。またライセンシング(第三者によるキャラクター利用)の場合の手続きやガイドも含まれます。
質問
公式キャラクターやロゴの色・形は厳格に守られているか?背景色やモノクロ印刷の場合の指定ルールは?
キャラクターのポーズや表情のバリエーションにガイドラインはあるか?不適切な表現にならないためのNG例は提示されているか?
グッズやノベルティにキャラクターを使用する際の許諾フローやガイドは整備されているか?
第三者が当社IPを利用したい場合のライセンス条件や利用規約は明文化されているか?
ブランドIP(ロゴ・キャラクター)がデジタル空間(SNSのスタンプやアイコンなど)で使用される場合のルールはあるか?
5. 製品に込めた思想やこだわりの伝え方
製品やサービスに込めた思想・こだわりを消費者に伝える方法も、ブランドガイドラインで定めておくべきです。単にスペックや機能を列挙するのではなく、ブランド哲学を体現する製品特性や、背景にあるストーリーを一貫したフォーマットで伝えれば、社内外でブランド全体の世界観と製品とのつながりを理解しやすくなります。
例えば老舗化粧品メーカーの資生堂では、ブランドミッション「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でより良い世界へ)」を掲げ、その哲学が各プロダクトにも息づいていることを様々なコンテンツで表現しています。
質問
各製品・サービスの説明に、ブランド理念との関連性をきちんと盛り込んでいるか?
例:環境志向のブランドなら、その商品がどう持続可能性に配慮しているか
商品開発ストーリーやこだわりポイントを伝えるフォーマットは統一されているか?どの商品でも共通の物語構造で語られているか?
パッケージデザインや取扱説明書などにもブランドの世界観を感じさせる要素
キャッチコピーやアイコン、品質保証のメッセージなどは盛り込まれているか?
店舗や公式サイトでスタッフが製品説明を行う際のトークスクリプトにも、ブランドのフィロソフィーが反映されているか?
6. デジタル・SNS・プロモーションでの活用指針
ソーシャルメディア・ガイドラインなど、公式WEBサイトやSNSアカウント、オンライン広告、さらにはリアルイベントでのプロモーションでも、ブランドガイドラインが必要です。
大阪・関西万博では、策定した「EXPO 2025 Design System」を公式WebサイトやSNSはもちろん、市中の装飾やサイン表示、グッズのパッケージなど様々な場面で展開しています。実際、公式サイトのデザインや名刺、イベントステージに至るまで、コアグラフィック(万博のビジュアルアイデンティティ要素)が一貫して用いられる例が提示されています。
質問
SNS運用において、投稿画像や動画はブランドの色・フォントを踏襲しているか?絵文字や話し言葉の使い方はブランド人格に合致しているか?
ハッシュタグやキャンペーンスローガンはブランドメッセージを反映したものになっているか?
例:スターバックスの#MeetMeAtStarbucksのようにブランド体験を想起させるもの
デジタル広告のクリエイティブ(バナー画像・動画広告)は、一目で自社ブランドと分かるデザインになっているか?ロゴの配置や使用は禁止事項を守っているか?
イベントや展示会でのブース装飾やスタッフのユニフォームなど、リアルな場でのブランド表現もガイドラインに沿っているか?
メディアごとの担当者や代理店が替わっても、ガイドラインを共有していれば常に同じブランドクオリティを担保できる状態か?
7. ブランドの世界観を伝える
上記の各要素を実際に適用した作例やインスピレーション例も示しておくと確実です。ガイドラインの最後に設けられることが多く、関係者が「ブランドらしさ」を直感的に掴む助けになります。
大阪・関西万博2025のコンセプトムービーが代表的です。これは、3年前の2022年に作成されました。ブレないデザイン、メッセージがイメージしやすいと思います。
質問
ブランドガイドラインの各項目を体現したベストプラクティスの例を挙げられるか?それらを関係者と共有できているか?
過去の広告やデザインで『この表現はまさに当社の世界観を示している』というものは何か?ガイドラインに掲載しているか?
新人デザイナーや代理店にガイドラインを渡すだけでなく、事例を見せれば直感的にブランド理解が深まるような資料になっているか?
「ブランドの歴史的資産(ビジュアルやスローガンの変遷など)を振り返るギャラリーはあるか?それらから一貫したテーマを読み取れるか?
まとめ
ブランドガイドライン策定は、ブランドの哲学を社内文化や顧客体験まで浸透させ、一貫性をもたせるために行われます。
大阪・関西万博2025のような大がかりなものでなくとも、コンセプトとデザインポリシーの軸を明確にできれば、ブランドイメージがブレにくくなります。
できれば、ガイドラインを定期的に見直し、アップデートする柔軟性をもたせると良いでしょう。この記事が強固で魅力的なブランドガイドラインを構築する一助となれば幸いです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。
※本記事は一部AIを活用して執筆しています。