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なぜ私たちは「お金儲け」を目的にできないのか?——「粋と野暮」から紐解く、次世代に愛されるブランドの条件

  • 8 分前
  • 読了時間: 11分
生きるための表現手引き

別にお金が嫌いなわけじゃないし、事業を続けるためにお金は絶対に必要です。でも、「お金儲け」そのものを主目的に据えた途端に、どうしてもブレーキがかかってしまう。この違和感の正体は一体なんでしょうか。


ビートたけし氏や石原慎太郎氏、あるいは映画『男はつらいよ』の寅さん。彼らはお金を目的に動いていただろうか。彼らの根底には常に「仁義」や「粋な心」があり、それがないお金稼ぎは決してしなかったはずです。


効率や利益の最大化ばかりが叫ばれる現代において、なぜ私たちは損得抜きの「粋な振る舞い」に惹かれるのか。そして、野暮なお金儲けに走ってしまう人との境界線はどこにあるのか。


今回は、日本の歴史的背景である「粋と野暮」「贈与の精神」を紐解きながら、これからの地域や社会で選ばれ続けるビジネスのあり方について考えてみたいと思います。



「粋」と「野暮」の境界線。「交換」ではなく「贈与」の精神はどう生まれたか


「損得を超えた美学」や「等価交換ではない贈与」の精神は、日本の歴史や風土の中で独特の進化を遂げ、私たちの価値観として深く染み付いてきたものです。歴史的な背景を3つの視点から紐解いてみようと思います。



「粋」の誕生:金と権力への静かな反抗


「粋」という美意識は、江戸時代の町人文化から生まれました。当時、身分制度(士農工商)により、商人はお金を持っていても身分としては下に置かれていたのです。同時に、武士は身分が高くとも経済的には困窮しがちでした。


そこで江戸の人々は、権力やお金をひけらかすことを「野暮」とし、「物質には執着せず、精神的な余裕や人間らしさを重んじる態度」を美しいものとしました。お金にガツガツしないことこそが、洗練された生き方だったのだのです。


哲学者・九鬼周造は著書『「いき」の構造』(1930年)のなかで、「粋」の要素を「媚態(色気)」「意気(反骨精神)」「諦め(執着からの離脱)」の3つと定義しました。


お金儲けに執着しない「諦念(あきらめ)」と、損をしてでも筋を通す「意気(張りの精神)」が交わる部分に、粋が宿ると論じています。寅さんやたけし師匠の振る舞いは、まさにこの「意気」と「諦め」の体現だなぁと思いました。


いきの構造(書籍はこちら)
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「贈与」とコミュニティ:等価交換では終わらない関係性


「これをやったから、これをくれ」という等価交換は、取引が終わればその場で関係が清算されてしまいます。しかし、日本のムラ社会や地域のコミュニティでは、損得抜きで助け合う「贈与」が基本でした。


誰かのために汗をかき、そこに恩や義理が生まれる。借り貸しの連鎖が関係性を長続きさせ、人々を結びつけてきました。フランスの社会学者マルセル・モースは『贈与論』(1925年)において、古代社会の基本原理が市場経済的な等価交換ではなく、「贈与と返礼(お互いに与え合うこと)」であったと明かしています。


贈与論
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日本でも、屋根の葺き替えや農作業を地域全体で無償で助け合う「結(ゆい)」という互助システムが長く根付いており、これが現代にも通じる義理人情のベースになっています。地域社会というコミュニティの内部に深く溶け込み、相互に支え合うことで、生活やなりわいが守られてきたのです。



日本的ビジネスの根底にある「道徳」と「バトンの継承」


日本での商売は、単なる個人の利益追求ではなく、「社会を良くするための一つの役割」として発展してきました。自分の代だけで利益を吸い尽くすのではなく、先人から受け継いだ資産や信用を重んじ、それを次世代へリレーしていくように事業を繋ぐことこそが、本来のあり方とされてきました。


江戸時代の思想家・石田梅岩は、「真の商人は、相手を立たせ、自らも立つ」と説き、正当な利益は社会奉仕の結果であるとしました。


また、近代日本経済の礎を築いた渋沢栄一氏は『論語と算盤』(1916年)の中で、経済活動(算盤)と道徳・倫理(論語)は一致しなければならないと主張しています。仁義なき利益追求を明確に否定したこの教えが、日本の多くの企業や商人のDNAに刻まれています。


論語と算盤
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利益という数字だけでなく、人々の感情の機微や、連綿と続く文化の継承に価値を見出す。私たちが「お金儲け」を主目的にすることに違和感を覚えるのは、この長く深い歴史的文脈の上に立っているからだと言えます。



なぜ「野暮な稼ぎ方」に固執してしまうのか?粋な人とのターニングポイント


では、なぜ現代において、数字やお金にしか固執できない「野暮な稼ぎ方」をする人が生まれてしまうのか。粋な生き方をする人との間には、大きく3つのターニングポイントが存在するのではないかと考えています。


時間軸の違い:自分の代だけで終わる「点」か、次世代へ繋ぐ「線」か


野暮な人は、事業を「自分の代だけで完結する点」として捉え、生きているうちに利益を最大化しようとしています。一方、粋な人は、自分を「過去から未来へと続くリレーのランナーの一人」として捉え、バトンを絶やさず次世代へ繋ぎます。この時間軸の長さが、目先の利益への執着を手放させるポイントだと思っています。



関わり方の違い:市場からの「搾取」か、共同体への「貢献」か


野暮な人にとってビジネスは、ターゲットからいかに効率よくお金をとるか?というゲームになります。しかし粋な人は、自らが地域や共同体の一部として内側に深く入り込み、周囲が豊かになることで自らも生かされるという生態系を築きます。ここに関係性の搾取は生まれません。



解像度の違い:数字の「理屈」か、人間の「情緒」か


損得では説明のつかない人間の弱さや、割り切れない感情の揺らぎ、そうした「心の機微」に対する解像度を持っているかどうかもポイントとなります。ビジネスをスプレッドシート上の数字の羅列だけに落とし込まず、時には効率主義に抗い、人間くさい余白や情緒を大切にするからこそ、そこに「粋」が宿るんじゃないかと思います。



「粋」な振る舞いこそが、深いプレファレンス(好意度)をつくる


こうした哲学的な思考は、決してビジネスと切り離されたものではありません。むしろ、現代のマーケティングにおいて極めて重要な意味を持っていると思います。


ビジネスの世界では、しばしば「効率」や「CPA(=顧客獲得単価)」といった数字が先行します。「粋な振る舞い」や「損得抜きの贈与」は、一見すると非効率の極みのように思えるかもしれません。しかしマーケティングの視点で見ると、この考え方こそがブランドに対する深いプレファレンス(=好意度)を築く最大の源泉となります。


機能や価格といった「等価交換」の結びつきは、より安くて便利な競合が現れればすぐに代替されてしまいます。一方で、義理や人情、損得を超えた物語を持つブランドは、顧客の記憶に深く刻まれます。


その結果、生活者の日常の中で何かを必要とする瞬間(カテゴリーエントリーポイント=CEP)が訪れたとき、「あそこにお願いしたい」「あの人から買いたい」と真っ先に脳内に想起される状態(メンタルアベイラビリティ)を獲得できるのです。


▼参考:カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介



また、HONEでは地域や事業の未来を描く際に「レガシー・リレー」と「コミュニティ・イン」というモデルを提唱しています。


参考:【アトツギの生存戦略】100年企業を次の100年へ繋ぐ、4つのマーケティング視点
参考:【アトツギの生存戦略】100年企業を次の100年へ繋ぐ、4つのマーケティング視点

▼参考:【アトツギの生存戦略】100年企業を次の100年へ繋ぐ、4つのマーケティング視点



先人から受け継いだ資産や文化を重んじ、次世代へバトンを繋ぐ「レガシー・リレー」。そして、市場を外から狩りとっていくのではなく、自らが共同体の内側に入り込み、互いに支え合う生態系を築く「コミュニティ・イン」。


これらは新しいビジネスモデルではなく、日本の歴史や文化に根ざした、最も持続可能で「粋」な在り方への回帰です。



【粋と野暮】効率化の果てに、人は「情緒」に回帰する


AIが進化し、あらゆる業務が効率化・自動化されていくこれからの時代。機能的価値の追求だけでは、やがてすべてのサービスが同質化していきます。


その時、最後に人と人、人とブランドを繋ぎ止めるのは、文学が描き出すような人間の複雑な感情の機微であり、損得勘定を抜きにした体温のある関わり合いです。


お金を稼ぐことは、生きるため、そして事業を明日へ繋ぐための大切な「血液」であることは間違いありません。しかし、それは決して「目的」にはならない。私たちはこれからも、仁義を通し、粋な心を忘れず、泥臭く誰かのために汗をかいていきます。そんな「人間くさいビジネス」を、次世代へ繋いでいきたいと思います。



HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶ地方マーケティング会社です。


日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。


地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。


HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶマーケティング会社です。


▼HONEにできること


語られていない価値の「骨」を探す

商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。


現場に入り、五感を使って「骨」を磨く

戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。


手を動かしながら、「骨」を強くする

支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。


文化となる「骨格」を、未来へ残す

目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。


▼HONEにできること


▼HONEの強み


01/一貫サポート

戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。


02/現場主義

デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。


03/全国実績

北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。


04/産学官連携

企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。


▼HONEの強み


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。


制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。


なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか


地方に必要なのは、「地域理解」


こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。


地方に必要なのは、「地域理解」

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

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