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まちづくりにおける公共施設のマーケティング分析 ― 地域の担い手としてできること

  • 執筆者の写真: 桜井 貴斗
    桜井 貴斗
  • 2月7日
  • 読了時間: 11分

更新日:3月30日

まちづくりにおける公共施設のマーケティング分析 ― 地域の担い手としてできること

地域の活性化には、公共施設が果たす役割がますます重要になっています。しかし、「施設運営を通じてまちづくりにどう貢献できるのか」「地域の人々とどのように関わればよいのか」と悩む方も多いのではないでしょうか?


本記事では、マーケティング視点を取り入れながら、公共施設運営者としての立ち位置を整

理し、地域に求められる役割を明確にする方法を探ります。





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目次



施設運営者としての立ち位置を明確にする3つのステップ


施設運営者としての立ち位置を明確にする3つのステップ

地域の活性化において、公共施設の運営者は重要な役割を担っています。日々、住民の多様なニーズに応え、地域へのより良い価値提供に注力されていることでしょう。しかし、限られた予算や人手で、どのように施設を運営すれば地域により貢献できるのか、悩む方も多いのではないでしょうか。


そこでまず大切になるのは、「自分たちの施設が地域の中でどんな役割を果たしているのか」を明確に掴むことです。ここでは、施設の役割を理解し、地域に貢献するための3つのステップを紹介します。



1. 施設の強みと地域の課題を整理する


地域にとって公共施設をより価値のある場にするためには、まず「施設の強み」と「地域の課題」を整理することが重要です。


日々の運営で得た住民の声や、利用者数の傾向をあらためて整理すれば、施設の役割が明確になります。


施設の強み

関連する地域課題

立地条件が良い

地域経済の活性化につなげる施策が必要

多様なサービス提供

子育て支援・高齢者福祉の充実

地域住民との信頼関係

住民の参加を促進し地域のつながりを強化


これらの課題を定性、定量の両面で分析すると、施設の特徴が整理できるはずです。



2. 施設の役割を定義し、ターゲットを明確にする


公共施設は地域住民なくして存在できません。施設の強みが見えてきたら、次は「施設の役割」と「誰に向けた施設なのか(ターゲット)」を明確にすることが重要です。


例えば、地域の文化や歴史を伝える博物館であれば、教育機関として役割を果たすことが期待されますし、コミュニティセンターであれば、住民同士が交流し、支えあえる場の提供が期待されます。


地域住民の年齢層、興味関心、ライフスタイルなどを分析し、どのようなニーズがあるのかを把握しましょう。



3. 地域との連携を強化し、実践につなげる


施設運営者が積極的に地域のさまざまなステークホルダーと連携する施設は、より本質的な地域課題の解決に貢献していると考えられます。しかし、どこからどうやって連携すればいいのか、そもそもできるのかと悩む方は少なくありません。

ここでは、地域との連携を深め、実際の行動につなげるための3つのステップを紹介します。


1. 関係者とのコミュニケーションを強化する

地域住民、自治体、NPO、企業などと積極的に対話し、相互のニーズや期待を理解することが重要です。定期的なワークショップや意見交換会を開催し、地域の声を直接聞く機会を設けましょう。


2. 具体的な連携の形を考える

施設が地域のイベントに協力したり、課題解決に向けた共同プロジェクトを立ち上げたりすることで、住民との接点を増やし、信頼関係を築くことができます。


3. 連携の成果を評価し、次に活かす

定期的に成果を振り返り、成功点や改善点を分析することで、より効果的な連携方法を見つけ出します。継続的な見直しを行いながら、地域とのつながりを深めていきましょう。



マーケティング視点で考える「地域のニーズ」とは?


実は、上述した3つのステップに、マーケティングの視点が多く含まれています。私が日々実践している、顧客ニーズの把握はまさに、上でお伝えした調査・分析と情報整理、そしてコミュニケーションで成り立っています。


ここでは、公共施設におけるニーズ分析のポイントを3つの切り口で掘り下げてみました。



地域住民の属性と関心を分析


住民の属性(年齢、性別、職業、教育レベルなど)を把握することは、ニーズ分析で不可欠です。例えば、以下の方法と切り口が考えられます。


アンケート調査

オンライン、もしくは紙面でアンケートで、興味のあるイベント、日常の困りごと、地域に期待することなどを定量的に把握する。

回答者の年代別・性別・職業別の傾向を分析し、ターゲットごとの関心を明確化する。


インタビュー・ヒアリング

地域の商店、自治会、学校関係者などに直接インタビューを行い、住民のリアルな声や価値観を深掘りする

イベントや施設利用時にスタッフがカジュアルなヒアリングを行い、定量データでは見えにくい個別のニーズを把握する。


SNS・デジタルデータの活用

地域のSNSグループや掲示板の投稿を分析し、関心の高い話題や課題を探る。(ソーシャルリスニングといいます)

施設の公式SNSアカウントを活用し、コメントやリアクションから住民の関心や反応をリアルタイムで把握する。


地域課題の把握は、歴史や文化、特性にも考慮できると、より本質的なニーズへたどり着けると思います。



地域に不足しているものを見つける


地域の活性化には、課題や不足しているものを明確にし、住民のニーズを把握することが重要です。アンケート調査や対話を通じて意見を収集し、必要なサービスや施設を具体的に理解しましょう。例えば、以下の切り口が考えられます。


アンケート調査

住民に「地域で困っていること」「あったら便利なサービス」などを質問し、定量的なデータとして傾向を分析する。

年齢層や生活環境ごとにニーズが異なるため、子育て世帯、高齢者、若年層などターゲット別に設問を設計すると効果的。


インタビュー・ヒアリング

地域の商店、自治会、福祉団体などにインタビューを行い、住民目線で感じている不便さを探る

公共施設の利用者に直接話を聞き、既存サービスの課題や改善点を洗い出す。


データ分析・地域資源の確認

自治体が発表している人口動態や福祉・教育関連の統計を確認し、地域の課題を客観的に把握する。

近隣の自治体や他地域と比較し、不足しているサービスをリストアップする。


地域環境を理解することで、施設に必要な役割が見えてきます。地域の実情に即した取り組みを行うことで、住民の満足度を高め、施設の価値をさらに高めることができるはずです。



施設の強みを活かした解決策を考える


公共施設が地域に貢献するためには、その施設が持つ独自の強みを理解し、それを活かした解決策を考えることが重要です。地域の課題に対して「何ができるか」を戦略的に考え、具体的な取り組みに落とし込む3つのステップをお伝えします。


施設の強みを活かした解決策を考える


1.施設の強みを明確にする

施設の強みを明確にするためには、施設が提供できるサービスやリソースを洗い出す必要があります。例えば、広いスペースや特定の設備、専門的な知識を持つスタッフなど、これらは地域のニーズに応えるための貴重な資源となります。


分析の例

ハード面(物理的な特徴)

  • 広いスペース → 展示会、スポーツ、地域イベントの開催

  • 専門設備(調理室、音響設備など) → 料理教室、音楽イベント、ワークショップ

  • アクセスの良さ → 近隣住民の集まりやすさ、交通の便を活かした観光資源化


ソフト面(人的資源・提供サービス)

  • 専門知識を持つスタッフ → 講座や学習支援、相談窓口の設置

  • 地域とのネットワーク → 企業・NPOとの連携、地域住民のコミュニティ形成支援



2.地域の課題を把握し、施設の強みとの結びつけ

次に、地域住民が抱える問題や要望を洗い出し、それに対する施設の強みと、どのように活かせるかを考えてみましょう。例えば、地域の高齢化が進んでいる場合、施設が提供する健康促進プログラムや交流の場が有効な解決策になるはずです。


課題と施設の強みのマッチング例


  • 高齢化が進んでいる地域

    • 健康促進プログラム(体操教室・ウォーキングイベント)、交流サロンの提供

  • 子育て支援が不足している地域

    • 親子向けイベントの開催、育児相談窓口の設置、遊び場の開放

  • 地域の文化が伝承されていない

    • 伝統工芸や郷土料理のワークショップ、歴史展示の開催

  • 若者の定住率が低い

    • 起業支援セミナー、コワーキングスペースの提供、地域資源を活かしたプロジェクトの企画



3.強みを活かした具体的なプラン策定

施設の強みを基にしたサービスやイベントを企画し、地域の課題を解決するための 実行可能なプランを立てましょう。地域住民に対して積極的にアプローチすることで、より多くの人々に利用してもらうことが可能になります。


ここから先は戦略の話になります。具体的な分析〜戦略の仕方は、事例から学ぶのが一番です。


▼全国の公共事業、NPOなどが手掛けたまちづくりの事例をまとめました。

【ユニーク事例あり】全国のまちづくりに関する成功事例と課題を紹介

▼公共事業を含むまちづくり事業の分析・戦略を考える時に役立つ本をまとめてみました。

  地域活性化に役立つまちづくり本8選 先駆者の実例から学べ


まちづくりに貢献するために今日からできること


ここまでお伝えした調査、分析、戦略立案、実践は、すぐ行えるものではないかもしれません。壮大に思えたかもしれませんが、小さな取り組みに分解し、スモールステップで積み重ねることができれば、結果的に地域全体の活性化につながります。今日から始められる具体的な行動について、いくつかご紹介します。



住民の声を活かす仕組みづくり


住民の声を集めるために、意見を出しやすい環境を整えることも大切です。そのための具体的な方法として、いくつかの例をご紹介します。


・アンケートや意見交換会の実施

・オンラインプラットフォームの活用

・ワークショップの開催


例えば、受付に紙面アンケートを置いて集計することは、今すぐ始められると思います。Googleフォームを使うならば、個人情報以外の情報収集に特化することで、公共施設でも利用できるかもしれません。


また、ワークショップやイベントを開催した際にインタビューや紙面アンケートを実施してみるのも良いでしょう。収集した意見を施策に反映し、その結果を住民にフィードバックすることで、信頼関係を築くことができます。このような取り組みを通じて、地域の担い手として持続可能なまちづくりに貢献しましょう。



マーケティング視点で施設の魅力を発信する


施設が提供するサービスやイベントの特徴を明確にし、発信してみるのも、すぐできることです。


発信=SNSと捉えられがちですが、チラシや掲示物、回覧板も重要な発信媒体です。


SNSや地域のニュースレター、ポスターなど、さまざまな媒体を活用し、施設の魅力を広く伝え続けてみてください。


その発信に対する反応をアンケートなどで数値化しておくと、施設のどの価値に魅力を感じているのかが明確になるはずです。



地域資源を活用したサービスの展開


公共施設の運営において、地域資源を活用したサービスの展開は、地域の魅力を引き出し、住民や訪問者にとって価値ある体験を提供する鍵となります。地域には、歴史的な建物や自然環境、地元の特産品など、さまざまな資源が存在しており、これらと連携・活用できれば、地域の個性を際立たせて、住民や訪問者にとって価値のあるサービスを提供することができると思います。

地域資源を活用するには、それらを正しく理解し、サービスに組み込む工夫が必要です。地元の農産物直売所や伝統工芸に関わる組織、団体、人との関係性を築くことがまず求められるでしょう。

また、住民自身の知識や技術を活かして参加することができるのも、公共施設でできることのひとつです。組織、個人関係なくコミュニティの絆が深まり、持続可能なまちづくりにつながります。経済的利益だけでなく、文化や歴史を次世代に伝える重要な手段となるのです。



まとめ


地域の活性化において、公共施設は重要な役割を果たします。その施設の立ち位置を明確にして、地域に求められる価値提供ができれば、より良い地域づくりに寄与できるでしょう。まちづくりにおける自分の役割を見つけ、積極的に地域に関わっていくことが、持続可能な地域社会の実現に向けた第一歩となります。




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