地域おこし協力隊募集の現状と課題、そして自治体側ができることとは?
- 桜井 貴斗
- 41 分前
- 読了時間: 10分

地域おこし協力隊は、全国で7,910人が活動するまでに拡大し(令和6年度)、受入自治体も1,176団体に達しました。
隊員・自治体の数ともに伸びている中、一方で「最近は協力隊を募集してもなかなか応募がこない」と悩む自治体も増えてきていると聞きます。人口減少、地方移住が過熱化する今後においてこの課題は続いていくものだと思われます。
現在、地域おこし協力隊応募者の主な情報源は自治体のホームページがメインとなっています。しかし、ここに“迷子”が生まれているのが実情です。
具体的には、
そもそも協力隊の情報がどこに掲載されているかわからない
協力隊の募集要項の内容がわかりづらい(不明瞭)
ミッション(協力隊の任務)の粒度・出口(任期後キャリア)がイメージできない
など様々です。
本記事では、地域おこし協力隊とはなにか?課題はなにか?をデータを元に整理し、うまくいっている事例をご紹介したいと思います。
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目次
地域おこし協力隊:応募者の情報導線
任地を選んだきっかけ
地域おこし協力隊活動の実態
参考:地域おこし協力隊の活動内容
ケース:長野県の「わかりやすい」地域おこし協力隊募集
ケース:長崎県の「協力隊受け入れ側のサポート」
全国の地域おこし協力隊事情
そもそも地域おこし協力隊とはなにか?
総務省のホームページでは以下の通り記載されています。
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です(流用)。

上記の通り、全国の過疎化や高齢化に悩む自治体が都市部から担い手を呼び込んで、地域の活性化を図る取り組みとして始まりました。
受入自治体も1,176団体という数字は受入可能な1,461自治体のおよそ80%にあたり、大きな広がりを見せていることがわかります。
それでは現状、どのような導線で協力隊が応募〜マッチングに至っているのでしょうか。
流用:
地域おこし協力隊:応募者の情報導線
一般社団法人 移住・交流推進機構の令和6年調査では、地域おこし協力隊応募前に情報を得た媒体として「自治体のホームページ」:47%、JOINサイト:24%、知人・OBOG:32%が上位というレポートを出しています。
最も見られているのは自治体のホームページ、ということになります。となると、協力隊を募集しよう、となった際はまずは自治体のサイトを見ている人のが1番多いと言うことになります。

自治体(県・市町)のWeb体験=採用広報の要であり、「探しやすく、比較しやすく、腹落ちする」情報設計が応募数と質を左右するといえます。
任地を選んだきっかけ
では地域おこし協力隊が現在の任地を選んだきっかけはなんだったのか?
その最大の理由は、「活動内容が魅力的であったから(28%)」と回答しています。
次点で「地域としてよいイメージを持ったから(持っていたから)」という地域特性もありますが、1番は場所よりもやるべきことが魅力的である、ということに惹かれています。


地域おこし協力隊活動の実態
続いて協力隊着任後の活動の実態についての設問も見てみたいと思います。
現役隊員の活動は「地域コミュニティ(42%)」「イベント運営(31%)」「情報発信(30%)」が“取り組んでいる”項目で上位となっています。
これらは従来の活動内容であり、着任を決めた理由ともいえそうです。
一方で“最も時間を割く”活動は?という回答では「農林水産(14%)」に取り組んでいる回答が多くなりました。あらかじめ課せられていた活動と実際に時間を割いている活動にズレがあることがうかがえます。


協力隊の目的(ミッションと呼ばれています)ではあるべき像を謳っていたとしても、実際に地域に入って働いてみるとミッションとはかけ離れた活動となっていた、ということにもなりかねません。そうなると、協力隊自身の不満につながるだけでなく、そこから口コミが広がり、協力隊応募の数にも影響が出てきてしまいそうです。
参考:地域おこし協力隊の活動内容
ちなみに地域おこし協力隊には様々な活動があります。
地域おこし協力隊活動領域マップを見ても分かる通り、「地域経済を盛り上げたい」という思いから「社会課題を解決したい」という横軸、「幅広く取り組む」こともできるし、「専門領域で取り組む」という縦軸まで、自分に合った活動を見つけることができます。
活動内容は地域によって異なりますが、農林水産業など一次産業への従事をはじめ、特産物を活かした商品開発、デジタル化などの住民の生活支援、交流の場づくりなどさまざま。 課題解決のためのアプローチが多岐にわたることも多く、例えば「空き家対策」というひとつのテーマにおいても、「空き家の調査や所有者との交渉」に加え「SNSでの情報発信」など、ミッションが複合的なケースも少なくありません。(流用:「地域おこし協力隊 活動領域マップ」とは?)

協力隊の募集要項が“わかりやすい”自治体
上記のアンケートより、
地域おこし協力隊応募前に最も情報を得た媒体は「自治体のホームページ」
応募最大の理由は、「活動内容が魅力的であったから」
「あらかじめ課せられていた活動と実際に時間を割いている活動にズレ」がある
ということがわかってきました。
ではうまくいっている都道府県・自治体はどこなんでしょうか?総務省のデータでは以下の通りとなっています。


都道府県別では 北海道(1,307)・長野(545)・福島(354)が上位となっています。直近5年の任期終了者の定住率は約7割弱。
対人口規模に換算するとまた変わってくる可能性はありますが、それでも北海道・長野県は定住率も平均以上となっています。
次の章ではなぜ地域おこし協力隊を数多く誘致し、定住までつなげられているのか?について深掘りしていきたいと思います。
ケース:長野県の「わかりやすい」地域おこし協力隊募集
ここでは長野県も例にとって考えてみます。
長野では長野県のホームページ内で市町村ごとの募集を写真・ミッション・人数・連絡先までひとまとめで掲載しています。



また各市町村自治体ページやJOIN(応募ページ)へ誘導も明確で、募集情報の見える化と動線づくりがとてもわかりやすくまとまっています。
ケース:長崎県の「協力隊受け入れ側のサポート」
その他のエリアでは長崎県は市町村職員向け研修や中間支援人材の育成、県委嘱隊員による伴走まで打ち出し、“地域おこし協力隊の募集要項の質改善”と“協力隊の受入体制”の両輪を高めるためのサポートを行なっています。

サポートには長崎県の地域おこし協力隊OBOGの組織である一般社団法人 長崎県地域おこし協力隊ネットワーク(NCN)が入り、研修設計や運用を行っています。

長崎県の地域おこしメディア「Nagasaki Edit」について
長崎県の地域おこし協力隊はなぜ長崎を選んだのか、どんな暮らしをしているのか、地域とどう関わっているのか、卒業後にどんな道を歩んでいるのか。そんな協力隊のリアルに触れることで、"長崎で暮らす"というイメージの解像度を上げたい。そんな思いから「Nagasaki Edit」は生まれました。 「Nagasaki Edit」では、"地域おこし協力隊"をキーワードに、隊員や卒業生が移住者・住民という視点で長崎を見つめ、長崎で暮らすことのヒントと本音を伝えていきます。長崎での仕事、地域おこし協力隊への応募、移住などを検討している方が、地域とベストマッチな関係を築けるようにサポートする。それがこのメディアの役目です。
弊社(HONE)でも長崎県地域おこし協力隊向け研修を行っており、約4年間研修講師として協力隊をサポートさせていただいています。
以上2つの県(長野県・長崎県)のように、募集側が「わかりやすく募集要項を掲載をすること」と「協力隊の受入体制を整えること」の2点をおさえていくことはとても大切だと感じます。
地域の魅力を知るにはまずは「地域を知ること」
ここまで地域おこし協力隊についての現状、課題、事例をご紹介させていただきました。
上記以外に弊社HONEがおすすめしているのが地域の魅力を伝えるためのフレームワーク「GHILフレーム」です。
一般的にフレームワークは、以下のような目的で活用されます。
情報を的確に整理する
自由で多様な発想を引き出す
視点の転換を促し、新たな可能性を発見する
発想を広げ、アイデアの数を増やす
小規模な試行(パイロット)で検証する
関係者間で合意形成を進める
一方で、「GHILフレーム」は、これらのビジネスにおける知見を「地域活性化マーケティング」に応用するという視点から研究されました。
特に、地域資源の発掘・整理・再構築という初期段階において、どのようなフレームワークが有効なのか。その選定と活用方法を示し、リサーチやディスカッションの現場で活用できる方法論として明確化することを目指しています。
具体的には、
地域資源をどのように整理・分類し、価値へと導出していくかというプロセスを体系化する
戦略立案やSTP・4Pなどの既存フレームと並ぶ、独自の“地域活性化向け思考ツール”を確立する
ワークショップやリサーチ、発想を促進する場で、実務的に活用できるよう整理する
を通じて、地域価値の創造を構造的に支援しようという試みです。
まず地域のことを知りたい、理解したい、魅力を整理したい、というときにはGHILを活用するのも1つの手段なのでぜひ参考にしてみてください。
HONEのサービスについて
当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。
地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだ「3つのサービスプラン」をご用意しており、お悩みや解決したい課題に合わせてサービスを組んでいます。ご興味のある方は、ご検討いただければと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。