「桃太郎伝説」のように昔話を観光ブランドに昇華する、地域活性化の成功事例4選。
- 桜井 貴斗

- 7月28日
- 読了時間: 8分
更新日:10月7日

日本各地には、昔話や伝説、歴史上の人物や妖怪の伝承など、“地域の物語”を観光資源として活用し、ユニークなブランドづくりで経済効果を生み出した成功例が数多く存在します。
特徴的なのは、単に歴史コンテンツとして打ち出すのではなく、その土地ならではのストーリーをわかりやすく打ち出すことで、地域への愛着や興味を喚起し、観光客誘致につながる、という点にあります。
本記事では、岡山県の「桃太郎伝説」をはじめ、地域の物語をうまく活かした観光まちづくりの事例を、マーケティング視点で4つご紹介していきたいと思います。
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事例①:岡山県「桃太郎伝説」—郷土のヒーローが地域シンボルに
岡山県は「桃太郎の県」として積極的にPRを行っています。JR岡山駅や岡山桃太郎空港には桃太郎の銅像が設置され、桃太郎と鬼をモチーフにした県公式マスコットキャラクター「ももっち」「うらっち」が観光案内板やウェブサイトなど各所で活躍しています。

お土産として定番の「きびだんご」も物語に登場する団子を由来としており、パッケージにも桃太郎が印刷されているほど地域と密接に結びついた名物です。2018年には「桃太郎伝説」が日本遺産に認定され、観光客誘致や地域活性化の起爆剤とすべく官民連携の協議会が設立。
当時、岡山市長も「市民の誇り、かつ観光資源として、地域活性化の起爆剤にしていければ」と期待を述べ、伝説を題材にしたPR動画や子ども向け学習漫画の制作など官民一体の情報発信が進められています。


「桃太郎伝説」とは、吉備津彦命(きびつひこのみこと)による鬼退治伝説のストーリーと岡山県内に残る27件の文化財を結びつけたもので、文化庁に認定された地域の物語です。
吉備津神社や鬼ノ城跡など桃太郎伝説ゆかりの史跡も県内各所に点在しており、歴史遺産も含めたストーリーで観光客を惹きつけています。
全国的に知られた昔話を地域ブランドの中核に据えることで、訪れる人にも物語が伝わりやすく、地域の印象に残りやすいマーケティング資源となっています。
事例②:秋田県男鹿市「なまはげ」—伝統行事を観光資源化
秋田県男鹿(おが)半島の「なまはげ」は、大晦日の夜に鬼のような面をかぶった来訪神が「泣ぐ子(こ)はいねがー」と叫びながら家々を巡る、ユニークな伝統行事です。現在の男鹿市では、市の入口にある観光案内所で高さ15メートルの巨大なまはげ像が出迎え、道路沿いの標識や看板など至る所になまはげの姿が描かれています。

また「なまはげ館」では110種類以上の様々ななまはげ面が展示され、隣接する男鹿真山伝承館では大晦日の習俗を再現した実演を通年で観光客が体験できます。
なまはげは今や男鹿半島の観光になくてはならない存在となり、その迫力ある姿が多くの旅行者を魅了。毎年2月に真山神社で開催される「なまはげ柴灯まつり」では、松明を手に山を下りてくる大勢のなまはげが披露され、国内外から多くの観光客を集めています。

さらに大晦日の本行事そのものも健在で、男鹿市内の約85の集落で一斉に行われ、300人以上の男性が吹雪の中をなまはげ姿で練り歩く伝統が現在も受け継がれています(出典:男鹿のナマハゲの今)。
2018年にユネスコ無形文化遺産に登録されたのを機に、男鹿市も本格的に観光コンテンツとしての活用に乗り出し、外国人向けの行事体験ツアーを企画するなど新たな取り組みも始めました。
伝統文化を観光資源化する際には、単なるキャラクター商品に頼らず本来の意味や由来を正しく伝える工夫が重要ですが、地域ならではの体験価値を創出することで大きな経済的インパクトを生んでいます。
事例③:岩手県遠野市「カッパ伝説」—民話の郷で妖怪を観光コンテンツに
岩手県遠野市は、柳田國男による民話集『遠野物語』の舞台として知られる「日本の昔話のふるさと」です。しかし近年は観光客が減少傾向にあり、2019年の年間観光入込客数は震災前の8割程度の約170万人に落ち込み、宿泊客は全体の4%程度にとどまるなど課題を抱えていました(出典:観光マネジメントボード遠野 事務局)。

こうした状況を打開するため、遠野市では地域の“物語”を切り口にした観光戦略が模索されました。その代表例が「カッパ伝説」の活用です。
川に棲む妖怪「カッパ」の伝説は遠野の象徴で、市内の常堅寺裏手にある小川の淵には「カッパ淵」と呼ばれる名所があります。ここでは観光客向けに「カッパ捕獲許可証」(税込220円)を販売しており、釣り糸の先にキュウリをつけて淵に垂らし、本物のカッパ捕獲を狙うユニークな体験ができます。

もし運良くカッパを捕まえて遠野テレビ(地元局)に連れて行けば賞金1,000万円という設定で、物語の世界を遊び心たっぷりに楽しめる仕掛けです。この捕獲許可証は遠野市観光協会やカッパ淵近くの伝承園で購入でき、裏面には「頭の皿の水をこぼさないこと」など捕獲の心得が記されています。

遠野市ではこの他にも、カッパをモチーフにした公式ゆるキャラ「カリンちゃん・くるりんちゃん」をPRに起用したり、『遠野物語』由来の妖怪文化と地元特産のホップによるビール文化を組み合わせた新しい観光ポスターを作成するなど、伝統と現代資源を融合させた情報発信にも取り組んでいます。
古き良き物語を単に観光名所として残すだけでなく、遊び心ある参加型の仕掛けによって訪れた人に物語の一部になったような体験を提供することで、SNS等を通じた話題づくりにもつながっています。
事例④:滋賀県彦根市「ひこにゃん」—ご当地キャラがもたらす経済効果
滋賀県彦根市の「ひこにゃん」は、全国的な“ゆるキャラブーム”の火付け役とも言われるご当地マスコット。2007年に彦根城築城400年祭のキャンペーンキャラクターとして誕生した白い猫の武将で、モデルは彦根藩主を雷雨から救ったとされる招き猫の言い伝えがあります。

井伊家伝来の赤備えの兜を身につけた愛らしい姿が大きな話題を呼び、登場と同時に全国からファンが殺到する人気キャラクターとなりました。
ひこにゃん目当てに訪れる観光客で彦根城の入場者数は飛躍的に増加し、関連グッズも飛ぶように売れています。定量指標でみても経済効果は絶大。滋賀大学の調査によればひこにゃん登場による観光消費の増加などを含めた経済波及効果は約338億円にのぼったとされます。
ひこにゃんの成功を受け、2000年代後半からは各地で多くのご当地キャラが生み出されましたが、十分なリサーチがないまま乱造された例も多く、ひこにゃんほど長期にわたり定着したケースはそう多くありません。
現在ではひこにゃんは彦根市の「特別住民」として住民票が交付されるほど愛され、市を象徴する存在になっています。

歴史に根ざした物語を背景に持つキャラクターがこれほどの成果を上げたことは、ストーリーブランディングの威力を示す象徴的な例と言えます。
地域活性化まとめ
ご紹介した事例はいずれも、地域に古くから伝わる物語や伝承を現代の観光資源へと昇華させた成功例です。昔話や伝統行事といったコンテンツは、その土地ならではの独自性を象徴する強力な資源となり得ます。
その「資源」を誰にでも親しみやすい形(キャラクター、お祭り、体験プログラム、名物商品など)で発信することで、訪れたみなさんに特別な体験を提供し、地域のファンづくりにつなげることができます。
また、物語に共感した人々がリピーターとなったりSNSで情報発信してくれることで、持続的な集客効果も期待できます。
マーケティングの視点では、地域固有の「物語資源」を発見・発掘し、単なる歴史コンテンツの発信にとどまらず、戦略的に編集していくことが、地域の魅力を最大限に引き出し地方創生を実現する大きなカギとなるはずです。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。
※本記事は一部AIを活用して執筆しています。








