『まちづくりの非常識な教科書』町を動かす人のための、極意と覚悟の本【町おこし】
- 梨沙子 亀元

- 10月22日
- 読了時間: 10分

『まちづくりの非常識な教科書』という本を読みました。
行政、商店街、観光関係者、市民活動など、関係者が増えるほどに合意形成は難しくなり、計画の実行は遠のく。そんな現場で、どうすれば「合意形成より、実行」「反対より、突破」ができるのか?
本書は、地域づくりの現場で実践と失敗を繰り返してきた実践者・吉川美貴さんのリアルな声で構成されています。「心の壁」「内の壁」「外の壁」といった見えない障害をどう突破するか。町を動かせる極意とは何か。
この記事では、著者の言葉の引用や読書メモをもとに、まちづくりの本質を考えていきます。
ぜひ最後までご覧ください。
※この記事はまちづくりの非常識な教科書/吉川 美貴 (著)を参考に私見を加えて執筆しています。
【著者紹介】
吉川 美貴(きっかわ みき)さん
味匠きっ川(伝統鮭製品製造加工販売業)取締役。大阪教育大学教育学部を卒業後、神戸製鋼所人事部やケーブルテレビ会社勤務を経て、1998年より夫とともに新潟県村上市で町おこしに取り組み始めた。
株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。
資金なし・仲間なしでも、町は変えられる。
たった35万円の資金と3人の仲間から始めた町おこしが、20年後には観光客が押し寄せ、21の賞を受賞するプロジェクトに育った。
これは、吉川さんご自身が経験してきた実話です。
観光資源やイベントに頼るのではなく、「何もない」ところからどうやって地域を変えていくのか。その問いに正面から向き合ってきた20年間の軌跡が詰まっていました。
なぜ、町おこしは失敗するのか?

「できる範囲でやろう」の心構えでは失敗する
町おこしに身を投じた場合、「一歩一歩できることからやっていく」、これはいい。しかしいったん、具体策としてやる内容を決め、プロジェクトを立ち上げた場合、「できる範囲でやろう」ではダメである。「甘え」と「逃げ」を断ち切り、やれることはすべてやりきるという覚悟と決心をもって、全力を投じることが肝要である。
「みんなでやろう」とすると失敗する
日本人は総じて「みんなで病」にかかっているのではないか。「みんなでやろう」、「みんなに聞いてから」、「それは、みんなが納得するように」、「みんなが納得しないと」、「みんなに申し訳ない」等々、われわれはこの「みんな」という思考回路の中組み込まれてしまっている。しかし実際は、町おこしの構想はあるが形にはまだ表されていないという時点で、「みんな」の賛同を得、「みんな」で歩をそろえて立ち上げていくなどというのは不可能といってよい。
以下は要約です。
「とりあえず会議」「とりあえずコンサル」
課題の本質を見ずに、とりあえず集まることで動いている風を装う。
外部に委託して安心する一方で、現場の熱は冷めていく。
自治体に任せっぱなし
民間の担い手が自走せず、「行政が何とかしてくれる」と依存してしまう構図。
行政もリスクを取れず、慎重に構えるため、動き出しが遅くなる。
組織ありきで個人が動けない構造
関係者が多いことで調整コストが高くなり、「誰がやるのか」が曖昧に。
責任の所在がぼやけ、誰も手を動かせなくなる。
こうしたよくある構図が重なると、現場の主役であるはずの住民や商店主、若い担い手の気持ちはどんどん離れていきます。
特に地方では、「一度やって失敗したこと」は、二度と挑戦されにくくなります。最初のアクションが中途半端で終わることが、次のチャレンジへの無言のブレーキになるからです。
吉川さんは、その悪循環を断ち切るためには、最初の設計から無理なく続く構造を仕込む必要があると語っています。
最初から完璧を目指さず、試行錯誤を前提とする
小さな実験を、個人の手で始める
成果を焦らず、仲間と共有するストーリーに集中する
これらの視点が、失敗を恐れず、地続きの町おこしを実現する鍵になるのです。
「感動」を原動力にして、みずからが進化発展していく
町おこしを継続させるなかで、エネルギーが枯渇しないよう進化発展するために行ってきたことをお伝えしたい。それは感動できるものを求めて意図的にとり込んでいったということだ。一流のもの、最高のものを求めて、料理、音楽、空間、舞台、さまざまなものにふれ、できるだけつくってきた。 最高のものというのは、創意工夫されており、美しく、エネルギーに満ちて、インスピレーションを降らせてくれる。町おこし、まちづくりには、美学も必要なので、最高のものを体験しておくことは、すべて町おこしの栄養になってきた。 「目が覚めるほど感動する」ことは、直接・間接に物事を推進させていく際の大きな原動力になり、かつみずからを進化発展させることにも役立ってきたのである。
私は「いいな」「なんかこの場所、気持ちいいな」「誰かに話したくなる」といった、心が揺れる瞬間をとても大切にしています。それは、地域資源が持つ価値や、人と人とのつながりに宿る温度感を、受け取り、営みへとつなげていく姿勢にも通じるものです。
何十年も変わらない手作業で続けられてきた商いの美しさ、何気なく交わされた「この町って、いいよね」という一言など。こうした体験が、日本の地方を「守り続けたくなるもの」にしてくれる原点なのだと思います。
それは必ずしも派手なプロジェクトによって生まれるものではなく、感動を受け取る目と日々に取り入れる姿勢から生まれてくるものでもあると感じています。
吉川さんの言う「目が覚めるほど感動する」ことが、自分自身をも進化させていくという視点は、地域プレイヤーとして動き続けるための、大切な燃料なのだと、あらためて実感しました。
町おこしにカリスマはいらない。
もう一点、「カリスマ性」ということについて書くならば、仮にカリスマ性のある人がリーダーであったにせよ、人は実はそのカリスマ性についていっているのではないということである。 リーダーその人がやっている「内容」についていっているのである。「出している実績」に対して、人はついていっているということである。
つまり、リーダーとは「カリスマ性を持った特別な存在」ではなく、目の前のことをやり続けている人なのです。
誰かが何とかしてくれる、影響力のある人がいないと無理だ。自分なんかでは無理と、自ら一歩を踏み出すことが躊躇することなく、小さな行動を続けていくことだと思います。
地味で目立たない行動でも、それを継続することで「リーダーのふるまい」になっていく。
リーダーとは名乗るものではなく、行動によって自然とその姿に近づいていく存在なのだと思いました。
町を俗化させないために必要な「美意識」

町おこしがメディアに取り上げられ、注目を集めるようになると、いつの間にか「売れること」が目的になってしまうことがあります。
吉川さんは、こうした現象を「俗化」と呼び、次のように語っています。
町が俗化していくとき、本来守るべき土地らしさが見えなくなる。
では、町の品格を守りながら、発展していくにはどうしたら良いのでしょうか?
4原則が書かれていました。
町を俗化させない美学4原則
1. その土地らしさを損ねるものは排除する
どれだけ話題になっても、地域性を軽視するコンテンツは採用しない。
「ご当地〇〇」といった一時的な流行に乗るのではなく、地に足のついたらしさを大切にする。
2. 大衆に迎合しすぎない
誰にでもウケることを目指すと、結果的に誰の心にも残らない。
町の価値は、すべての人にわかりやすく説明できるものではないという前提に立つこと。
3. 数字を追いすぎない
「数字は把握すべきものではあっても、追うべきものではない。追うべきは本質である。」
確認する指標を持つことは大切です。
しかし、それが目的になると、町おこしは本質を見失います。
4. 自分たちの「ホンモノ」から外れない
物産でもなんでもかつてのほんものを検証し、
「安直なことをしない」こと、そして「形骸化させない」ことである。
一過性の流行や期待に流されず、町のアイデンティティに根ざした判断軸を持ち続けることが、永続可能な地域づくりにつながるのです。
「美意識」それがある町とない町では、10年後の姿が大きく変わっていきます。
わかりやすい「成果」に惑わされず、歴史と本物、事実を知り町の輪郭を守りながら育てていく。それが吉川さんの語る、「魂を売らない町おこし」の根幹なのだと思います。
町おこしとは、経済の活性化のみにあらず
「なんのために町おこしをするの?」と問われたとき、たいがいの人の答えには、「地域が衰退し、疲弊しているなかでこのまま町の未来はないら」というニュアンスの回答が返ってくる。そんななかには「町おこし」や、「地域活性化」という言葉は「経済活性化」とほぼ同義のように使われている。 しかし実際に町おこしをしてみるとわかるのだが、この町おこしというものには経済活性化のほかに、想像以上の奥行きと意味合いがあることに気づくのである。
少し本文をかいつまんでまとめてみます。
1. 町おこしとは、文化の継承である
町にはそれぞれ独自の文化や風習、方言、まちなみが存在しており、それらは町の「宝」です。町が衰退すると、染め物や漆器などの伝統産業とともに、その文化も失われてしまいます。町おこしは、そうした有形無形の文化を次世代に伝えていく営みでもあります。
2. 町おこしとは、先人の「徳」を生かすことでもある
かつてその土地に生きた無数の先人たちの「徳」や志は、町の空気や風景に宿っています。町おこしとは、それを見つけ、掘り起こし、言語化して次代につなぐ行為。地域の誇りや魂を再発見するプロセスでもあります。
3. 町おこしとは、人が起きること。ひとりが輝けば、町も国も輝く
町の活性化とは、経済的な指標だけで測るものではなく、「ひとりひとりが自分の個性を生かして社会に貢献する」ことで実現します。その一人の輝きは、先祖への感謝となり、町や社会、国全体をも照らす力になります。
「数字で示して」「成果を出して」と求められる場面に直面することもありますが、文化や風土、人の思いといった目に見えない価値を守り、育てていくことも、町の未来をつくるうえで確かな投資だと思います。
どんなに立派な戦略や補助金があっても、人の心を動かす「何か」がなければ変わりません。その「何か」は、「感動」であり、「覚悟」であり、そして「魂」なのだと感じました。
「まちづくりの非常識な教科書」まとめ
この本が繰り返し伝えているのは、「地域づくりに正解はない」ということ。ノウハウではなく、地域に関わるすべての人に向けた生き方の提案でもあるのだと思います。
私自身も、地域と関わる仕事をする中で、何度も「このやり方で合っているのだろうか」と迷うことがあります。そんなとき、本書の言葉にあるように「正解は実践の中にしかない」という事実が、改めて背中を押してくれます。
地域づくりとは、壮大な計画を立てることではなく、一歩踏み出し、歩みを続けること。現地に足を運び、人の話を聞き、リアルを知り学び肌で感じることを大切にしたいと思います。
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当社では、地方企業さまを中心に、マーケティングやブランド戦略の伴走支援を行なっています。
事業の成長(ブランドづくり)と、組織の成長(ブランドを支える土台づくり)の双方から、長期的な価値創出をお手伝いしています。
また、地域そのものの魅力や文化を活かしたまちづくりにも携わっており、企業単位の支援にとどまらず、地域全体のブランド価値を高める取り組みを進めています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
マーケター 亀元梨沙子









