【サイトリニューアル座談会】地方に“骨”のあるマーケティングを|設計とデザインの舞台裏
- 桜井 貴斗

- 9月30日
- 読了時間: 11分

9月初旬にHONEのサイトがリニューアルしました。
今回はHONEの2人(桜井・亀元さん)と、ディレクターのillo/NCNの小宮さんとデザイナーの大橋さんの4名でサイト制作においてどんなポイントを工夫したか?についてセルフ座談会を行いましたので記事にしてみました。
キーワードは「言葉から始めるサイト設計」、「ワイヤーフレームを使わない進め方」、「“骨太”なビジュアル」。その他、テキストライティングにおける生成AI(NotebookLM)の活用法や公開後の手応えまでをまとめています。
(座談会実施日:2025年9月29日)
目次
カテゴリー戦略モデルとは?
言葉で“骨格”をつくる
今回のサイトリニューアルの進行ステップ
周囲の反応
参加メンバー
発起人:HONE桜井
HONE代表。今回のサイトリニューアルの発起人。地方に骨のあるマーケティングを実装すべく、全国を奔走中。9月は離島に2度(隠岐の島、壱岐)いきました。

HONE亀元さん
福岡在住。HONEのマーケターとして戦略と戦術を行き来しながらクライアントさんをサポート。今回のサイトリニューアルでは小宮さんのディレクションを全面サポート。

ディレクション:小宮さん(illo / NCN)
ディレクター。国境離島、長崎県対馬市出身。現在は対馬と福岡の2拠点生活を送りつつ、釣りと音楽とディレクションの人。最近、第一子が誕生。

デザイン:大橋さん
フリーランスWebデザイナー。デザインの力で、事業の課題に向き合う。Studio Expert Gold。SDA 2年連続受賞している今引っ張りだこのデザイナーさん。

はじまりは「画面設計書」から
桜井:サイトリニューアルをするぞってなった際に、まずは小宮さんとの壁打ちからはじめました。デザインイメージを引っ張ってきたり、susworkの田岡さんのカテゴリー戦略に則って言語化してみたりしました。
小宮:Figmaにまとめていきましたよね。



カテゴリー戦略モデルとは?
新カテゴリーを創出するためには、①「顧客が抱える潜在課題」を捉えた上で、②「独自価値」、③「想起」、④「連想」の論点から設計することが必要です。これらを1つの戦略モデルとしてまとめたものが、カテゴリー戦略モデル 「4C 」です。 流用:カテゴリー戦略モデル(suswork)
HONEの4Cは以下のように定義しました。
①「顧客が抱える潜在課題」
地方のお客様は市場構造・事業理解だけでなく、地域理解・文化背景などの定性領域も交えた理解を求めている
地方企業には“想い”や“文化”があるが、それを仕組みや経済に変換する方法がわからない
自社の収益向上はもちろんだが、自分たちが根ざして暮らしている地域も好きになってもらいたい
②「顧客にとっての独自価値」
マーケティング戦略だけではない、地域理解・ソーシャルインパクト・経済と社会の両立・地域内バリューチェーン・地域内再投資ができること
「戦略提案」だけではなく、文化を支える「骨格設計」 「マーケティング」だけではなく、風土に寄り添う「経済と文化の共創」 「外からの処方箋」だけではなく、内側から育てる「仲間」
親身になって事業や地域のことを理解してくれる献身性。難題から逃げずにとことん向き合う。
一過性の施策ではなく、地域の歴史や文化(今から人の手では作れない価値)と事業を接続して、真に長く愛される事業・地域を紡ぐ
(これまで戦略設計を推してきたけど、もはや戦略設計はそれを実現するための一つの手でいいのでは?戦略設計だけが得意なわけではない)
③「顧客が想起できるキーワード」
「地方マーケティング」と呼んでいる(が、もう少し別の名称が必要かもしれない。そもそもマーケティングが地域の人たちの理解を遠ざけている可能性がある?)
文化と経済の骨格デザイン
地域デザイン
④「顧客が価値を直観できるイメージ」
「地方に骨のあるマーケティングを実装する(今)」だが、「地域のらしさがずっと続くシステムをつくる」あたりがしっくりくるかも。カルチャーの維持・保全、社会性と経済性の両立、持続可能な地域をつくる
地域の“らしさ”が、未来へ続く骨となる。 HONEは、文化と経済を支える、 風土に根ざした“骨格の共創者”
“歴史・文化”と“経済”を紡ぎ、地域に“誇り”という骨格を築く地域デザイン
言葉で“骨格”をつくる
桜井:戦略的な言語化をした後、小宮さんが言語化してもらったドキュメントをもらった気がします。
小宮:Webサイト画面設計書ですね。今回、HONEとの共通認識をつくるためにも、デザインをお任せする大橋さんに共有するためにも、まずは設計書をつくろうと思ってまとめてみました。
桜井:私もまず言葉で定義するタイプだったのですごく見やすく、頭に入ってきやすかったです!

※小宮さんより、制作時に使っていたWebサイト画面設計書(ページ構成・セクションの優先順位・掲載情報をテキストで整理したもの)を画面共有してもらう。
小宮:まずは「HONEとは何者か」から再定義してみました。分かっているつもりの強みや提供価値を言語化で固定し、その上でページの並びやセクションの優先度を決めていきました。
亀元:私も入社前後のタイミングだったので、どんなこと・ものを大切にしているか理解する上でとても参考になりました。



桜井:地方でマーケティングを従事している会社、地方でブランドをともにつくる支援会社というイメージを持ってもらうために、どんなことを伝えればいいだろう、と私自身も明確に言語化できていなかったため、自分自身のこれまでの行動を棚卸する意味でもとても整理ができました。
ワイヤーフレームを使わない進め方
桜井:今回、ワイヤーフレームをあえてつくらずに進めていったと思うんですが、何か意図はありましたか?
小宮:以前は、ディレクターとしてワイヤーをつくってデザインへ進めていました。ただ、ワイヤーが“型”として強すぎると、デザインがワイヤーに寄ってしまい、デザイナーさんの個性を削いでしまいそうだなぁと思ったんです。
桜井:なるほど。確かにデザイナーさんもワイヤーに合わせてつくらなきゃ、という意識になってしまいそうですよね。
大橋:デザイナーとしては意識せずともつい寄ってしまうことはあるかもしれません。
小宮:そこで今回はワイヤーフレームの制作をやめ、テキストの構成案+中身(載せる情報)だけをデザイナーの大橋さんに渡す方法に切り替えました。構成を固定しすぎず、デザイナーさんの創造性を最大化できないかな?と。
桜井:個性やらしさを活かす小宮さんっぽいアプローチです!(さすがです)
今回のサイトリニューアルの進行ステップ
まず言語化:コンセプトと強みを文章化(桜井)
情報設計:ページ/セクションを優先度順にテキストで整理(小宮さん)
ワイヤーはつくらず、ビジュアルはデザイナー(大橋さん)に一任:“骨格”を踏まえ自由に設計
相互レビュー:思想⇄表現を行き来する“翻訳役(亀元さん)”が機能
そうして出来上がったデザインマップが以下の通りです。

デザインの方向性は一言、「骨太」で。
大橋:初期に類似のサイト事例などをいただていた要望からは「ナチュラル」な方向性も見えていました。ただ、桜井さんの普段発信している芯のある言葉やWebのサイト設計書を見返すと、より力強い“骨太”のデザインが適合するのではないか——と感じました。そこで、「骨太」案(A)と「ナチュラル」案(B)の2案を提示してみました。


小宮:直接的な指示はしなかったのですが、大橋さんが2案つくってくれて、どちらもいいなぁと思いました!
桜井:正統派であればナチュラルのBなのですが、HONEっぽいなって思うのはAでした!ロゴの圧が強めでしたが、でも骨太ってこうゆうことだよね、ということで最終的にA案でお願いすることにしました。
亀元:私も骨太のA案の方がイメージに近く、概念をビジュアル化していただいたなぁと思いました!
桜井:ですね!ファーストビューから「普通のマーケ支援会社とは違う」ということを体感できそうだし、タイポグラフィ、余白、写真のバランスが良くて、HONEらしいの骨格が明確に描かれているなと思い、A案でお願いしますとお願いしました。
「地域ブランド」ではなく「地方マーケティング」を名乗る
小宮:「地方マーケティング」という言葉を使うのか、「地域ブランドの支援」と形容するのかも議論しましたね。
桜井:まさにです。言葉の選択は、事業の姿勢そのものだと思っています。チーム内では「地域ブランド支援」「地域デザイン」なども検討しましたが、最終的には「地方マーケティング」を旗印に据えました。
亀元:私自身も現場に行き、結果を出していくための総合編集(地域理解→リサーチ→戦略→実装→検証)を体感している最中だったので、やはり地方マーケティングを活かすべきだと感じました。


コピーとトーンは「強さ × やさしさ」のバランスで
亀元:桜井さんのSNSでの発信には芯の強さがある一方、サイトはSNSを見たことがない方も訪れる場所。本文コピーはやわらかく親しみやすく、地域への眼差しは丁寧にするように心がけました。「地方マーケター拾の掟」は、面白く楽しく読んでほしいと思い、表現しています。
小宮:私も同じようにバランスを取りました。ただし、「地方マーケター拾の掟」のようにエッジの効いたコンテンツではあえて強い言葉を残しました。
亀元:総じて「ロマンとソロバン」のバランスを大切に、初めての方でも迷わず読める編集にしています。

ライティングのAI活用:NotebookLMで“過去の自分”を編集
桜井:サイトの文章づくりは基本、AIの力を頼らずにつくっていますが、自身の思考整理や自社の記事づくりにはNotebookLMを活用しています。HONEについて考えているドキュメントを読み込ませてタタキをつくり、最終は人の手で整えています。
亀元:SEO目的の記事は量産せず、核となるメッセージは必ず自分たちの言葉で記事にしています。AIはあくまでも“整える・思い出す”ための相棒として使っています。
小宮:NotebookLMは過去の自分の思考を覚えてくれているので、他の生成AIよりもより精度が高く、ブレないですよね。
桜井:ふと立ち返るときにここに壁打ちしたりしています。自分で言った言葉にハッとさせられたりすることもあります(笑)。

サイト公開後の反響:セッションは566%増加
桜井:9月のリニューアル初月、セッションはリニューアル前の5.6倍まで伸びています。初月なのでSNSからの流入もありますが、多くは自然検索です。
大橋:そんなに伸びているんですね!すごいです。
桜井:Search Consoleで見てみると、「HONE」の指名検索が増えているほか、「フィジカルアベイラビリティ」「メンタルアベイラビリティ」など専門語や、「高校生に読んでほしいまちづくり本」などの過去記事が流入を牽引しています。
亀元:これまで1年半で200記事ほど書いていたため、相互リンク依頼も増えています。今後は月間1万セッションの維持を目標に運用を続けていきたいですね。
桜井:ですね!また全国でもプロジェクトも増えているため、事例ももう少し出していきたいなと思っています。



周囲の反応
ありがたいことに多くのポジティブな反応をいただきました!
おわりに:思想と表現の“翻訳”が鍵
以上がセルフ座談会でした!
HONEの桜井の熱量とHONEの番頭役であるディレクターの小宮さんとの日常的な対話、そして柔らかく翻訳してくれる亀元さんがおり、デザイナーの大橋さんに伝わる、というスムーズな連携がうまくいったように思います。
それぞれが持ち場で役割を全うし、相互にフィードバックができました。思想とデザイン表現をつなぐ“番頭役・翻訳役”が鍵だと感じました。
HONEのサイト制作は、言葉 → 情報 → デザインの順で“骨”を通し、運用で血を通わせていくプロセスで公開ができました。これからも地域の現場に根を張りながら、学びを外へ返していきます。
HONEについて
HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。
地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。

私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだ「3つのサービスプラン」をご用意しており、お悩みや解決したい課題に合わせてサービスを組んでいます。ご興味のある方は、ご検討いただければと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。








