地方マーケティングとは?HONEが提案する「骨のあるマーケティング」を解説します。
- 桜井 貴斗

- 9月28日
- 読了時間: 11分
更新日:9月30日

地方マーケティングとはなにか?それは単なる地域のPR・販促活動を担うだけではありません。
HONEが提唱する「地方マーケティング」は、地域の文化資源と経済活動を両立させることと定義しています。そして最終的には「日本の故郷を次の世代に残す」ことを目指しています。
本記事では、そもそも地方マーケティングとはなにか?を紐解きながら、現場主義に基づく戦略、地方企業が自立自走を可能にするための実践的な手法(GHIL分析、バリュープロポジション、カテゴリーエントリーポイント)とともに解説します。
株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。
目次
3つの柱:現場主義・戦略/戦術の一貫性・自立自走
文化と経済の両立:故郷を残すためのマーケティング
なぜ地方マーケティングには「地域理解」が必要なのか
地域資源を可視化する「GHIL分析」とは
バリュープロポジション(独自の強み)の確立
市場で勝つための視点:ブランドの「差異」ではなく「文脈の差異」
浸透率の拡大:新規顧客を増やし、想起性を高める戦略
HONEが定義する「地方マーケティング」の核とは?
まずはじめにHONEが定義する地方マーケティングとは?骨のあるマーケティングとはなにか?私たちが大切にしているポイントについて解説をしていきたいと思います。
3つの柱:現場主義・戦略/戦術の一貫性・自立自走
HONEでは、「地方に骨のあるマーケティングを実装する」ことをミッションに掲げています。この「骨のあるマーケティング」は、以下の3つの要素で定義されます。

第一に「現場主義」です。机上の空論ではなく、現地現物を見ながら、時には自分たちが現場に立って商売を行う姿勢を持っています。

実際に、HONEではグループ会社のAstlocal名義で静岡市にて民泊事業を展開しています。地域に溶け込む、というよりも当事者として入り込んでいます。
また支援先であってもまずは現場に直接足を運んで現場を体験し、市場調査やコンセプト策定を行なっています。
商売を自ら行い得た知見をもとに支援業に転化していく。実業と支援業を「両輪で回す」ことで、難易度の高い地域や斜陽産業への支援にフィードバックしています。

第二に「戦略と戦術の一貫性」です。
目的を明確にした戦略(目的思考)と、具体的な手法(戦術)を常に意識し、両者を行き来しながら構想と実行が連動した状態を指します。ただ構想を語るだけではダメだし、とりあえず実行をするだけでもダメです。頭と手足を同時に動かすことを心がけています。
第三に「自立自走」です。
自社のマーケティングを他社(他者)に依存せず、最終的には地域や事業者さんが自らの力だけでマーケティングを実装できる状態をサポートすることを目指しています(そのため、単なる代行業務はお受けしていません)。
HONEでは、自社のバリュープロポジション(自社だけの独自の強み)を「地域の価値を高める戦略・戦術の一貫したサポートを通して自立自走をサポートする」と定義しています。
ただマーケティングを部分最適で良くするのではなく、全体最適を考えながらサポートしています。さらに事業・ブランド単体が良くなるだけでなく、地域の価値も高められるようなサポートを行なっています。

文化と経済の両立:故郷を残すためのマーケティング
HONEグループ全体の最終的なアウトカムは、社会課題である「過疎化・人口減少・伝統工業の継続・斜陽産業の変革」などを解消し、「日本の故郷を次の世代に残す」ことと定義しています。
これを実現するためには、文化と経済の両立が不可欠です。
ここでいう「文化」とは、その土地固有の環境資源(山、海、川など)、歴史資源(歴史的な建造物など)、産業資源(伝統工芸、地元産業)、生活資源(人柄、風土など)を指します。
これらの資源を守り、形を変えながら残していくために、経済的な活動(お金を生む手段としてのマーケティング)が必要となります。HONEは、この社会的価値と経済的価値の創出/転換を支援しています。


社会的価値と経済的価値をどのように両立していくのか?については先日(2025/9/20-21)ワークショップを行い、レポートを作成したのでこちらも併せてご覧いただけたらと思います。
▼社会性と経済性を両立できるのか?静岡で実践する2日間のマーケティングブートキャンプ【2025.09.20-21】
地方の価値を「見つけ」「創り出す」ための戦略フレームワーク
地域における社会的価値と経済的価値の創出/転換とは具体的にどういったことなのか?具体的にどのようにして価値を見つける、または創り出していくのか?について説明をしていきたいと思います。
なぜ地方マーケティングには「地域理解」が必要なのか
戦略フレームワークを使用するにあたり、地方マーケティングにおいては市場環境分析・事業構造理解に並んで「地域理解」を行うことが、大切になります。
地域理解とは、地域の特性、風土、産業、そしてそこに住む人々の理解を含みます。マーケティングを実装する以前に、深く地域を理解する必要があるのです。
しかしそれはなぜか?地方では都内以上に感情で動くからです。ロジックは合っているけれど、何か気に食わないということで物事が進まないことが多いです。
そのため、地域の特性を理解し慮りながら事業を進めることが求められます。

地域資源を可視化する「GHIL分析」とは
HONEは、地域活性化のマーケティング戦略の実務において、地域資源を深く考察するためのフレームワークとして「GHIL分析」を導入しています。GHILは以下の4つの視点の頭文字を取っています。
Geography(地理的視点)
History(歴史的視点)
Industry(産業的視点)
Life(生活の視点)

GHIL分析は、散在する有形・無形の地域資源を棚卸し、新たな着想や異なる視点を得るために、資源の「着眼」と「編集」を行うための手法です。
さらに、GHILの任意の2つ以上の資源を掛け合わせるC-GHIL分析(Cross-GHIL分析)によって、地域価値を創造する上での重要な資源を勝ちに変えることができます。
例えば、私たちが民泊を運営している静岡市用宗地区の分析では、「駿河湾(G)×持舟城(H)」を組み合わせて「富士山×海!絶景古城アドベンチャー」といったコンセプトのアイデアが生まれています。


GHILをより詳しく理解したい、という方は以下の記事をご確認ください。
バリュープロポジション(独自の強み)の確立
マーケティングとは、「誰に・何を・どうやって」届けるか、であり、特に「誰に」「どんな価値」を届けるかというバリュープロポジション(独自の強み)を明確にすることが重要となります。

HONEの支援では、このバリュープロポジションを、「自社が提供できる価値」「顧客が望んでいる価値」「競合が提供できる価値」の3つの円の重なり(顧客が望み、自社が得意で、競合ができない独自の価値)として定義しています。
弊社の事例としてご紹介しているJAハイナンさまと共に商品開発をしたブロッコる?では、包丁を使わず・洗わず・すぐ食卓に出せるという点を強みにして、「袋のままレンジで3分、洗わずにそのまま食卓へ。栄養・利便性に加え、思わず手に取りたくなるオリジナルパッケージ」をバリュープロポジションに設定しました。


ブロッコリーをもっと手軽においしく。そのままレンチンできる『ブロッコる?』【JAハイナン(静岡県牧之原市)】
本事例は日経クロストレンドさまにも記事にしていただきました。
「選ばれる必然」を作るためのマーケティング思考
ここまで地方マーケティングの定義から地域で求められる思考法について解説をしてきました。ここからは地域に限らず、市場で選ばれるために必要な選ばれる必然性についてお話をしていきたいと思います。
市場で勝つための視点:ブランドの「差異」ではなく「文脈の差異」
市場で選ばれるためには、他社と異なる「差別化」が必要ですが、消費者は本当に商品ごとに差別化をして商品やサービスを選んでいるのでしょうか?
例えば、以下のブランドの違いを明確に説明できますか?

なんとなくはわかるけれど、説明せよと言われると案外難しいですよね。
そもそも差別化の目的は、顧客に対して他の選択肢よりも優れた価値を提供し、競争優位を確立することです。しかし、現代のマーケティングでは、消費者が最初に知覚するのはブランドの差別化(差異)ではなく「文脈の差異」であるという考え方が重要視されつつあります。
状況が異なれば、想起のきっかけ(手がかり)も変わり、その場・その時の選好(プレファレンス)に合致した特徴を持つブランドが「気づかれる」のです。
つまり、「他社と異なる(差別化できている)から選ばれる」という向きではなく、「利用シーンに思い浮かぶから選ばれる」という向きで考える必要があります。
必ずしも差別化をしなくてもいい、ということです。マーケターの役割は、この「文脈の差異」を基に、顧客に「もっと気づきやすく」することにあると言えます。

浸透率の拡大:新規顧客を増やし、想起性を高める戦略
ではどのようにして選ばれるようになるか?を考える際に「ファンを育てていくか、新規にアプローチすればいいか」のどちらを優先すべきか悩まれることもあると思います。
地方の小規模なブランドや新しいブランドにとって、ファン(ロイヤルティの高い顧客・顧客満足度やリピート)を高めるよりも、新規顧客数(浸透率)を増やす方が売上に寄与しやすいというエビデンスがあります(ダブルジョパディの法則)。

浸透率を高めるためには、メンタルアベイラビリティ(想起のされやすさ)とフィジカルアベイラビリティ(買い求めやすさ)の双方が重要となるわけですが、小さなブランドはまずは新規の浸透率を高めること、ここからスタートすることをおすすめしています。

メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティについてより詳しく知りたい、という方は以下の記事をご覧ください。
▼メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティとは?具体的な定義と考え方を解説します。
ではどのようにして文脈をつくっていくか?については顧客に商品やサービスを思い出すきっかけやヒントを与えるカテゴリーエントリーポイント(Category Entry Point ,CEP)を設定していく、という流れになります。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは、新しい市場に参入する際や新商品・サービスを展開する際に、消費者の心に強く印象を残すための戦略的なアプローチを指します。
具体的には、消費者が「特定のカテゴリー(シーン)」を思い浮かべたときに、最初に頭に浮かぶブランドや商品・サービスを目指すこと、です。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)のより詳しい解説は以下の記事をご確認ください。
まとめ:地方企業が今日から実践すべきこと
地方に骨のあるマーケティングを実装するために、地方の事業者が持つべきは「地域の価値を高めていきたい」という想いと、それを実現するための確かな手法です。
HONEの経験から言えることは、「調査なき商品開発は自殺行為」ということ。マーケティングとは市場や顧客の行動(ファクト)を正確に知ることから始まります。
現場主義を貫き、自らの地域資源をGHIL分析で再認識し、誰に、どんな文脈で、どんな価値を届けるのかという「選ばれる必然」を戦略的に設計していく。この戦略と実行のサイクルを回すことこそが、HONEが提唱する地方マーケティングの真髄であり、持続可能な故郷を次世代に残す唯一の道筋です。

そのため、弊社でも上記の4点をサポートする事業伴走支援を行っています。
弊社サービス全体は以下よりご覧いただけます。
HONEのサービスについて
当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだ「3つのサービスプラン」をご用意しており、お悩みや解決したい課題に合わせてサービスを組んでいます。ご興味のある方は、ご検討いただければと思います。
\こ相談はこちらから/
その他、気軽にマーケティングの相談をしたい方のための「5万伴走プラン」もスタートしました。詳細はバナー先の記事をお読みください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。




.png)










