『ステートメント宣言。』コピーライターも、そうでない人も。自分の言葉を見つけ、伝え方を探そうとしている、すべての人へ。
- 桜井 貴斗
- 6 日前
- 読了時間: 12分
更新日:4 日前

宣伝会議から出版されている『ステートメント宣言。』。
読み終えて強く思ったのは、この本はコピーライターでもなければ文字を書くことを生業にしていない人こそ、読むべき本なのではないか?ということです。
本記事では桜井が心に残ったパートを一部抜粋してビジネスや生き方に転用できる点としてまとめてみました。
【ステートメント宣言。】書籍説明
広告コピーというと、一般にキャッチフレーズを思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、本書がテーマとしているのはボディコピー、中でも近年、多くの企業が掲げる方針、約束、声明、宣言などの「ステートメント」です。
本書は、この「ステートメント」に着目した初と言える書籍です。
近年、企業、商品、サービスの広告ということにとどまらず、プレゼンテーション、インナープロジェクトのコンセプトの策定など、あらゆるフェーズで「ステートメント」が求められるようになってきています。
コピーライターとして多くの広告を手がけてきた著者・岡本欣也は、ステートメントを書くことは「商品や企業が生まれてきた理由を探す」ことであり、広告の仕事とは「その眼差しのことである」と言います。
そして、そのことを著者に教えたのは、「すべての商品には、必ず存在理由がある」と言った師匠であるコピーライター 故・岩崎俊一さんです。
本書では、師匠の言葉に導かれて書いてきた自身のステートメントと他の方のステートメントを織りまぜながら、その時考えたこと、話し合ったことなどを綴っています。
本書ではこれからの時代におけるコピーライターに求められる仕事を改めて捉え直し、著者が培ってきた技法や考え方を公開。同時に、多くの人に伝わり、心に残るコピー、言葉とはどんなものなのか、本書を手にした読者の皆さまにも改めて考えていただく機会になると思います。
ユニクロのステートメントは「無個性」
(本書より) ユニクロでは、製品を自社で企画開発し、自社で生産管理し、自社で流通から販売までを行っています。私たちは、このシステムに改良を重ね、よりシンプルにして様々なコストをおさえることで、市場最低価格をめざしています。そしてその過程で品質を犠牲にすることは、絶対にありません。私たちは、あらゆる人が着ることができる「カジュアル」を信じています。 「カジュアル」は、年齢も性別も選びません。国籍や職業や学歴など、人間を区別してきたあらゆるものを超える、みんなの服です。服はシンプルでいい。スタイルは、着る人自身がもっていればいいと思うのです。ユニクロは、現在全国に368店。いつ来ても欲しいものがある「コンビニエンス」をめざしています。お近くの店はフリーダイヤル0120-09-0296でお問い合わせ下さい。 私たちはこの7月、年間総売上高1000億円を達成しました。山口県山口市大字佐山から、世界一のカジュアルウェア企業になるという夢をもっています。きっと、なります。
上記はユニクロのステートメントですが、私が当初感じていたユニクロとは、「上質な日常着」を売っているお店であって、そのどれもがシンプルで、あまりにもシンプルすぎて着るにはあまり魅力的ではないな(だから部屋着だけはユニクロにしよう)と思っていました。
しかし、ステートメントで書かれている、
「カジュアル」は、年齢も性別も選びません。国籍や職業や学歴など、人間を区別してきたあらゆるものを超える、みんなの服です。服はシンプルでいい。スタイルは、着る人自身がもっていればいいと思うのです。
ここの部分にカウンターパンチを食らったような感覚を覚えました。
私は自分が着るブランドや洋服でスタンスを示してきた節があるな、と感じました。ユニクロはスタンスは着る人自身が持っていればいいから、自分たちは年齢や性別や国籍を超えた区別のないカジュアルを目指すよ、と言われている気がしました。途端に人のブランドでスタンスを取っている自分が恥ずかしくなってきました。
ユニクロがシンプルである理由が少しわかったような気がしました。ステートメントとは自分たちのブランドのスタンスを示すことなんだな、と学びになりました。
ありがちだけど避けたいステートメント5つの特徴
(本書より) ①漢字が多い。 ②ワンセンテンスが長い。 ③できない約束をする。 ④オリジナリティがない。 ⑤ぜんぶ言う。 およそこの5つがありがちステートメントの特徴です。ここに掲げたすべてを「社員一人一人が情熱的にチャレンジ」し、実現することができたら誰も苦労はしませんし、さぞかし全ステークホルダーも満足することでしょう。 つまり、ありがちステートメントは基本的には、できない約束をする、オーバープロミスにとりわけ特徴があります。悲しいことに大多数の企業人は、ファンシーな大言壮語を語るのがステートメントの役割だと勘違いしている節もあります。
夢に向かって全力疾走とか、世界平和とか、この国の社会的な役割を担う一員として…など、間違っていないけれど記憶にも残らない言葉、というのは確かに存在すると思います。
ステートメントというとそれっぽい言葉を置いておこうと思ってしまうこともありますが、気をつけておきたいポイントだと思いました。
上記の逆を考えると、
平易で
端的で
等身大な言葉で
独自性にこだわり
取捨選択する
といったことなのかな、なんて思いました。まずは私から「それっぽい言葉やめようキャンペーン」をはじめてみたいと思います。
言葉はつくる、のではなく「見つける」
(本書より) 岩崎さんは「つくるな。見つけろ。」そして「言葉や意識に囚われすぎるな。」「あるものをあるがままに感じとる力を身に付けなさい。」と言っている気がします。あまり感覚的な話はしたくないのですが、つくらない」で「見つける」とはまさにそういうことだと思っています。 コピーは見つければいい。ということは「答えはもうすでにどこかに存在する」ということです。そしてそれは、ことのほか、近くにあるものです。 幸せはいつもそばにある、なんてことをよく言いますよね。真理も同じ。いろんな国を探してもどこにもなくて、帰ってきたら見つかった青い鳥です。
この勘所はマーケティング戦略をたてたり、ターゲットを考えるときと一緒だと感じました。マーケティングの領域ではつい、「理想の状態ななんですか?どんな顧客が理想ですか?」とヒアリングすることがあるのですが、その理想に引っ張られて、ありもしないペルソナをつくったり、理想である状態をWebサイトやブランドコンセプトに据えてしまったりしてしまうことがあります。
マーケティングでも大切なのはファクト(実際のお客さん)であり、そのファクトをどのようにして把握するか?から入らなければ理想と実態の乖離が理解できず、結果的にうまくいきません。
コピーもマーケティングも、つくるのではなく見つけることが大切なんだと感じました。
創業者にまつわる情報は、その企業のDNA
(本書より) 創業者にまつわる情報は、その企業の、DNA情報なのです。 何を大切にしたか。誰の幸せを願っていたか。困難にぶつかったとき、どんな行動をして、それを回避したのか。そして、部下に何を語り、何をすすめ、何を禁じたのか。いまでは私も、そういう目で会社のはじまりを観察することにしています。
私自身も小さいながら創業社長の立場として日々働いていますが、自分の人格が会社の人格になっていると思います。むしろ、会社と自分が乖離してまで大きくする理由ってなんだろう、とも思っています。
逆に自分がない人、こだわりがない人にとってはそこまで乖離する気持ち悪さもないため、シンプルに会社を大きくしていけるのかな、なんて思いました。
例えば数十年にわたって「味ひとすじ」の永谷園は、日本がバブルに沸いた頃でさえ、土地を買いあさったり株を買いまくったり、唐突に事業を多角化したりしませんでした。 本業しかやらないなんて臆病者のレッテルさえ貼られかねないバブル期に、余計なことをしなかったのは創業者である永谷嘉男の見識とまっすぐな理念によるものです。味はやる。他はやらない。「味ひとすじ」というたった5文字の明解で一徹なブランド・ステートメントは、この企業が今後どう成長するにせよ、精神の真ん中にずっと生き続けることでしょう。
永谷園にそんなエピソードがあったのかとびっくりしました。永谷園2024サステナビリティレポートでも以下のような記載があります。
永谷園グループの企業理念は「味ひとすじ」です。「味ひとすじ」は、永谷園の創業者である永谷嘉男の『お茶づけに一生を捧げる』という想いを言語化したものです。
事業を多角化して大きくすることはそれはそれで正しいけれど、一意専心で一生を捧げる姿も同じくらい正しい。そして私はこちらの方が向いていると感じました。
とにかく、クライアントの話は要約しないこと
(本書より) とにかく、クライアントの話は要約しないこと。 すぐ要約しようとする人がいます。どんどん端折ることを仕事だと思っている人がいますが、作業の前半においてはくれぐれもやめてください。 発言はできるだけ端折らずに、そのまま記述しておくことが大切です。オリエンに参加できなかった人に話すときもできるだけ、クライアントが話したことを、なぞるように話してください。
最近はAIの台頭により、対面でもオンラインでもAIが勝手に議事録を取ってまとめてくれます。はじめの方は私も人力で議事録を取っていたのですが、AIがあまりに精緻に議事録を取ってくれるので任せるようになりました。
そこまではまだいいのですが、徐々に書き起こしや録画ではなく、AIが要約した内容しか読まなくなるようになり、ふと、これはまずいぞと思っています。なぜならそれはあくまでもAIにとっての判断であり、その場に居合わせた人たちの総意でもこちら側の意志でもないからです。
そのため、改めてその場の要点などを自分自身でまとめるようにしました。端折らずになぞるように話す、伝えることを心がけたいと思います。
そして後半にこんな一文もあります。
(本書より) 受け手の知性をみくびる人ほどメッセージを単純化しようとします。
上記の要約やわかりやすさを求める風潮に似ていますが、「この表現だと伝わらないのではないか?」と少々わかりやすく、デフォルメしたり単純化しようとしてしまいます。わかりやすい、というのは伝わりやすくなる良さがある一方で、受け手の知性をみくびる行為であるとも言えます。
わかりにくいこと、複雑なことをあえてそのままにして知性に身を委ねてみる、というのも一つの方法なんだなと学びになりました。
若い頃に、ひとりの人から圧倒的な影響を受ける。
(本書より) 若い頃に、ひとりの人から圧倒的な影響を受ける。たくさんの人から少しずつ影響を受けるより、ひとりの人から影響を受けるほうが、受け取るものの輪郭がはっきりする気がします。多少の理不尽があったとしてもです。いまは師弟関係がなかなか成立しづらい世の中になったと思いますが、それでもよく見れば、意義深い師弟関係や上下関係が、たくさんの会社の中に隠されていると思います。 仕事をご一緒する人と、若い頃の話とか、しますよね。そうすると十中八九とまでは言いませんが、かなりの確率で「厳しかったけどたいへん世話になった先輩」の話が出てくるものです。私はそういう話を聞くのが好きなんですが、そこに出てくる恩人は、複数人というよりも、大抵ひとりです。 一対一の関係性の中で、怒られたこと、ほめられたこと、学んだことって、一生涯忘れないのかもしれませんね。現に私も、絶対に忘れないだけは自信があります。 忘れられない思い出の塊が、自分なのかもしれません。
これは私自身も心当たりがあります。
尊敬できる人は自分の価値観を変えてくれた人たちばかりです。そしてそれらの人たちはバイネームで脳裏に焼きついています。良い思い出も悪い思い出もありますが、それでも今思えば良い経験だなぁと思えているので、きっと良い思い出なんだと思います。
さらに、人材育成においても以下のように言及しています。
いまどきは、どんなに大きな組織でも人を育てることに、時間もコストもかけられない。その余裕がないのだと言います(ほんとうは「余裕」の部分でやるもんじゃないんですけどね)。 そんな状況が、一過性の人間関係を増やし、世代の違う人間との交わりを減らしているように私には見えます。そうして希薄化した人間関係が、職場に何をもたらすのか。個人主義、実力主義の美名のもと、職場はなにを失ったのか。企業も個人もいま改めて考えたほうがいいのではないでしょうか。
今の大人たちはもう若者に進んでフィードバックしません。フィードバックしてもパワハラ・モラハラのリスクがありますし、多様性だといって聞き入れない可能性だってあります。
私が思うに、昔から「教育」というのは教える側には総じて大きな利点はなかったのだと思います。でもそんな利点のないことを先輩から時間をかけてそうしてもらったように、次の世代に志と技能を繋いでいくという風習だったんだと思います。
でもその繋がりがなくなっている。その結果、個人主義・実力主義となり、AIの台頭によってそれらがさらに加速しているのが今、という感じではないでしょうか。今こそ弟子制度復活、というほどではないですが、教育を合理性の枠組みで考えずに取り組んでいくべきだと思っています。
参考(一次情報)
HONEについて
HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだ「3つのサービスプラン」をご用意しており、お悩みや解決したい課題に合わせてサービスを組んでいます。ご興味のある方は、ご検討いただければと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。