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『複雑化の教育論』教育とは?成熟とは?知性とは?教育をさせるすべての人に贈る希望の書【前編】

  • 執筆者の写真: 桜井 貴斗
    桜井 貴斗
  • 9月12日
  • 読了時間: 9分

更新日:9月13日

『過疎ビジネス』地域が“喰われない”ための3つの心構え

(本書より一部抜粋)


教員志望者の減少、不登校問題、問題視される教師の働き方、いじめ問題、見直される部活動、オンライン授業…など、教育が取り巻く環境は年々厳しくなっているように感じます。


学校は子どもたちの成熟を支援するためのものです。 これまで「子どもたちの成熟」という言葉を何度か使ってきました。みなさんも頷いて聴いてくれましたけれど、「成熟」という語が何を意味しているのかについては、ここまではっきりしたことを言っていません。 ――僕が考える「成熟」というのは「複雑化」ということです。

本記事では桜井が本書を読んで直接感じた「教育とはなにか・知性とはなにか・合意形成とはなにか」を言語化し、地域の現場で実装できる言葉として残すべく、記事を書いてみました。


※本記事は前編となります。後編はこちらから




成熟とは複雑化すること


(本書より) 人格が多層化する。目の前の出来事を捉える時の視座が増えると、立体視できるようになる。そうやってしだいに「一筋縄では捉えられない人間」になってゆく。それが成熟ということです。

人は誰しも、ふとした瞬間に「自分ってなんだろう」「どんな特徴があるんだろう」と考える生き物だと思います。しかし、いつも明確に答えられる人というのは少ないんじゃないかな、と感じています。


まず、この問いすぐに答えられない状態、というのが成熟している印なのかな?と結論づけました。


(本書より) 思春期を迎えると、心と身体が「ずれ」てきます。鏡を見ても、そこに自分とは思えない人間の顔が映っている。自分の声を聴いても自分の声とは思えない。自分の中に見知らぬ欲望や感情が生まれている。 思春期というのは、そういう不整合に苦しむ時期です。その不整合を無理やり抑え込んで、「すっきり」したいと願うのは自然な反応です。だから、子どもたちはうっかりすると定型にはまり込む。定型というのは傷つきやすい自我を守る「防護服」なんです。

小学校・中学校・高校などのクラスというコミュニティの影響力が強い場合、「キャラをつくる」「キャラになりきる」というのは一種の防護服の役目なんだと感じました。


むしろ、キャラになりきった方がクラスでの立ち位置が明確になるので何者かにはなれるわけですね。でもこれは本当に自分にあったキャラかどうか?よりも、クラスの中で求められるキャラを演じている、という方が多いんじゃないかと思っています。このキャラに耐えきれなくなって苦しくなってしまう子もいるんじゃないかと。


望まないコミュニティでの立ち振る舞いというのはとても難しい問題であると同時に、それを感じることが成長の一過程なのかなと思いました。



教育における知的資質とは?


(本書より) 最大の理由は「話を簡単にする人が賢い人だ」というデタラメをいつの間にかみんなが信じ始めたからです。 話を簡単にして、問題をシンプルな「真か橋か」「正義か邪悪か」「敵か味方か」に切り分けて、二項の片方を叩き潰したらすべての問題は解決する…というスキームをみんなが信じ始めた。 すべてを二項対立スキームに流し込んで、一刀両断する「スマート」な知性が過大評価される一方で、世の中は複雑であるということを認めて、その複雑な絡み合いを一つ一つ根気よくほぐしてゆこうとする忍耐づよい知性には誰も見向きもしなくなった。 みんなが「スマート」になろうと、「話を簡単にしよう」と必死に努力を重ねてきて、その結果、国民的スケールで知性の変えを招いてしまった。

ビジネスにおいても全く同じことが言えるなぁと思いました。


わかりやすく話す人が評価される、二項対立にした方が選択しやすい、など、わかりやすいこと・意思決定が早いこと=頭のいい人、スマートな人、という印象を受けています。実際に私もそのアクションを求められる・評価されることも数多くありました。


しかし、本当に物事はそんなに簡単に二分できるのか?すぐに意思決定できる問題なのか?というと全くそうではない。


特に私が携わっているさまざまな地域では意思決定が難しいことの連続です。


人口減少が進む限界集落の空き家を活用して欲しいという依頼や、非観光地に外国人を呼んで欲しいという依頼、ブランドが言語化されていないが短期でキャッシュをつくりたいという依頼、など、基本的に矛盾をはらんだ依頼ばかりです。


簡単に「ではAプランでいきましょう」とはなりません。Aを選ぶとBが犠牲になる。Cを選ぶとAが犠牲になる。といったように、何かを選択すれば、何かが犠牲になるような、トレードオフの関係が地域にはあります。


それらの絡み合った状態の中でもがき悩みながら決めていく、ということが常のように思います。となると、教育における役割は、大人になってからの答えのない問いに向き合う準備期間、と捉えるといいのかな、なんて思いました。



ほんとうに使える知力とは「未決状態に耐える能力」


(本書より) ほんとうに「使える知力」というのは、話を簡単にする能力のことじゃありません。そうではなくて、複数の仮説を並列処理できるだけの「頭の中のスペースの大きさ」のことです。「頭がいい」というよりは「頭が大きい」とか「頭が丈夫」というふうな形容が似つかわしい。これは養老盂司先生の言葉なんですけれど、ほんとうにそうだなと思います。大事なのは「頭がいい」ことじゃなくて「頭が大きい」ことだ、と。 これが教育においても最優先に開発すべき知的資質だと僕は思います。問いと答えを暗記しておいて、あらかじめ暗記した答えで問いに即答する能力は知的能力のうちのほんの一部に過ぎない。それもたしかにたいせつな能力ですけれど、知的能力のうちのごく一部に過ぎない。 それよりもっと実践的に有用な知的能力があります。それが「未決状態に耐える能力」です。ペンディングに耐える。鷲田清一先生が「中腰」という言い方をしますね。中腰に耐える。「座るか立つかどっちかにしろ」というのに対して、「ちょっと待ってください。もう少し中腰でいさせてください」という構えです。 中腰に耐えるためにはやっぱりそれなりの筋力が要る。でも、それは「強さ」というのとは違う。知的な肺活量みたいなものです。肺活量が多ければ、長い間、息を詰めていられる。即断しないで、じっくり状況を観察することができる。

知力の定義を言語化してもらった、と強く感銘を受けました。


上記で例に挙げた即決できない地域課題に対して、できるだけすぐに解決するのではなく、少々休まらない未決状態を耐える力をつけることが知力である、と内田さんはおっしゃっています。


白黒つけず、グレー。昔、白黒つけないカフェオーレというCMがあったような気がしますが、その状態をよしする判断、そして度量。これらを身につけることが知性であるということです。


葛藤に耐えるという名の知性については先日海士町に行ってきた際に感じたレポートにも触れているため、あわせてお読みいただけると嬉しいです。




コミュニケーション能力を図るには、一緒に旅行に行け


(本書より) 旅行というのは必ずトラブルが起きるからです。列車が遅れるとか、旅館の部屋割りがうまくゆかないとか、食事がまずいとか、飲み過ぎてげろ吐くやつがいるとか…必ず何か起きる。 そういう時に正味の人間の社会的能力がわかります。「誰のせいだ」というようなことをいつまでもうるさく言い立てる人もいるし、頭を切り替えて、いま手持ちにあるリソースで何ができるか、次善の策は何かということに集中できる人もいる。トラブルの時にこそ社会性の違い、特に復元力の差が際立ちます。 というのは、社会的能力というのは何かがうまくかかなくなった時に復元するかのことだからです。 コミュニケーション能力というのは、言いたいことをうまく相手に伝える能力のことではありません。コミュニケーションが途絶して、言葉がうまく通じなくなった状況から、コミュニケーションを再開させる能力のことです。 交渉能力というのは、押したり引いたりして自己利益を確保する技術のことではなく、交渉の余地がないような緊張関係をとにかく緩和して、対話的環境に持ち込む能力のことです。ほんとうに重要な能力というのは、すでにあるものの上に何かを加算する力ではなくて、マイナスからプラスに転じるかのことです。

ここの章も大変学びになりました。


コミュニケーション能力というのは、言いたいことをうまく相手に伝える能力のことではありません。コミュニケーションが途絶して、言葉がうまく通じなくなった状況から、コミュニケーションを再開させる能力のこと、だということです。


順調なときは誰だって調子がいいし、機嫌もいい。でも肝心なのはうまくいかなくなったときにどのように立ち振る舞えるか?状態を悪いところから良い状態にどのように回復させていくか?が求められます。


それを簡単に確かめられるのが旅行に行く、ということでした。確かに!と納得しました。私も自分たちのチームに迎え入れる際は旅に行きたいと思っています。



※本記事は前編となります。後編はこちらか



参考(一次情報・関連記事)


https://amzn.asia/d/g9bByKK (複雑化の教育論 (越境する教育))



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最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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【記事を書いた人】


プロフィール

株式会社HONE

代表取締役 桜井貴斗


札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。 クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。

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