【第1回/地方ブランドが活かすべき視点】地方ブランドの「売れない理由」を健康診断してみる-『ブランディングの科学4 ブランド健康診断篇』より-
- 17 分前
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地方には、良いものがたくさんあります。
おいしいお茶。丁寧につくられた工芸品。歴史ある温泉地。地域に根ざした食品メーカー。
代々続く家業。人柄の良い経営者。想いのある商品など。
しかし現場にいると、何度も同じ壁にぶつかります。
具体的には以下のような声です。
「良いものなのに、売れない」「知っている人には評価されるのに、広がらない」「一度買ってくれた人は喜んでくれるのに、次につながらない」「補助金やイベントで一瞬は盛り上がるけれど、継続しない」
地方ブランドの努力が足りないという話ではありません。むしろその逆で、多くの地方ブランドは寝る間も惜しんで頑張っています。それでも、なぜか売上が伸びきらない。
地方ブランドの課題は、「良いものをつくれていないこと」ではなく、良いものが「選ばれる状態」まで設計されていないことなのではないか、ということです。
今回の連載では、『ブランディングの科学4 ブランド健康診断篇』を手がかりにしながら、地方の中小企業・アトツギ・自治体・支援機関などが、ブランドをどう点検し、どう育てていくべきかを考えていきます。

良いものだけでは、選ばれ続けない
地方ブランドの相談を受けていると、つくり手の誠実さに触れる場面が多くあります。
素材を選び、製法を守り、地域との関係を大事にしながら、少しでも良いものを届けようとしている。その姿勢は、マーケティング以前にとても尊いものです。
しかし、生活者はいつも丁寧に説明を読んでから買うわけではありません。
店頭では一瞬で判断します。ECではサムネイルと商品名で流し見します。SNSでは数秒で通り過ぎます。日常の買い物では、深く考えず、いつもの選択肢を選びます。
どれだけ良い商品でも、買う場面で思い出されなければ選ばれることはありません。どれだけ想いがあっても、売場やECで見つからなければ買われず、どれだけ地域性があっても他の商品と見分けがつかなければ埋もれてしまい、どれだけ一部のファンがいても次に買う導線がなければ継続しません。これがリアルです。
地方ブランドに足りないのは持っている魅力を「選ばれる状態」にまで接続していくこと、と言えます。
SNSをやる
ECをリニューアルする
動画をつくる
パッケージを変える
展示会に出る
それぞれ悪い施策ではないのですが、それらのアクションが一本の線でつながっていなければ、結局は「点の施策」で終わってしまいます。
ブランドは、施策を足せば売れるわけでも価値が高まるわけでもありません。むしろ、課題が分解されていないまま打ち手だけ増えると、ブランドはどんどんブレて散らかってしまいます。
改めてお伝えしますが、地方ブランドに必要なのは、「良いものをつくる」から一歩進んで、「選ばれる状態をつくる」ことです。
想いが生活者の記憶や購買行動の中に入っていくための構造をつくる。その発想転換が、まず必要だと思っています。

ブランド健康診断とは、課題を分解すること
『ブランディングの科学4 ブランド健康診断篇』で印象的だったのは、ブランドを「なんとなく良い/悪い」で見ないということです。
人間の健康診断でも、「なんとなく元気そうかどうか」でみることはないですよね。血圧や血糖値、肝機能などを見て身体の状態を確認するように、ブランドもいくつかの視点に分けて状態を見る必要があります。
地方ブランドの現場では、「売れていない」という現象が、ひとまとめに語られがちです。
そして、その原因も「PR不足・デザイン不足・営業不足・認知不足」といった抽象的な言葉で片づけられやすい。もちろん、それらが課題であることもあります。ただ、本当に見るべきなのは、もう少し解像度を上げて、どこで詰まっているのか?を点検することではないかと思います。
そもそも知られていないのか?知られているけれど、買う場面で思い出されていないのか?思い出されているけれど、売場やECで見つからないのか?見つかっているけれど、買いにくいのか?買われているけれど、次につながっていないのか?同じ「売れない」でも、原因はまったく違います。
よく聞く話として、「クラウドファンディングでは売れたのに、通常販売では売れない」といったケース。これは、商品力がないというより、「応援購入」の文脈では買われたが、日常の購買場面には入り込めていない可能性があります。
▼参考:「良いもの」が自然と選ばれ続ける仕組みへ。DBAs・CEPs・ブランドエクイティの関係性とは?
それ以外にも、イベントでは好評だったのにECで売れない商品。これはリアルな説明があれば魅力が伝わる一方で、オンライン上では見つけにくい、伝わりにくい、買いにくいのかもしれません。
ブランド健康診断とは、こうしたボトルネックを見つける作業です。
売上だけを見るのではなく、認知、想起、識別、売場、EC、導線、再購入までを分解して見ていく。そうすることで、次に打つべき施策が変わっていきます。
地方ブランドの支援で本当に必要なのは、施策を増やすことではなく、詰まっている場所を見つけることです。病名が分からないまま薬を増やしても、身体は良くならないのはブランドも同じです。

「認知」ではなく、「買う場面で思い出されるか」
ブランド調査というと、多くの場合「認知度」を着目します。
このブランドを知っていますか?名前を聞いたことがありますか?商品を見たことがありますか?といった質問です。もちろん、認知は大切です。知られていないものは、そもそも選択肢に入りにくいからです。
ただし、ここで深掘りすべきは「知っている」だけではなく、どんな場面で思い出されているか?まで聞くことが大切です。
たとえば、あるお茶ブランドを知っていたとしても、「急須で飲む昔ながらのお茶」としてしか記憶されていなければ、水出し、食事中、仕事中の一息、手土産、業務用といった別の購買機会には入り込みにくいかもしれません。
あるお菓子ブランドが知られていても、「観光土産」としてしか思い出されていなければ、日常のおやつや贈り物の場面では選ばれにくい。ある工芸品が評価されていても、「高級で特別なもの」としてしか認識されていなければ、日常使いには広がりにくい。
つまり、認知とは単なる名前の記憶ではありません。どの場面と結びついているかまで含めて見なければ、実務には活かしにくいのです。
ここで重要になるのが、メンタルアベイラビリティやCEPという考え方です。メンタルアベイラビリティとは、生活者の頭の中でブランドが思い出されやすい状態のこと。CEPは、生活者があるカテゴリーに入るきっかけのことです。いつ、どこで、誰と、どんな気分で、何をしたい時に、そのカテゴリーが必要になるのか。地方ブランドは、この入口を丁寧に見つける必要があります。
▼参考:メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティとは?具体的な定義と考え方を解説します。
▼参考:カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介
さらに、思い出されるだけでは不十分です。
売場やSNSで見たときに、その「ブランドだと分かる目印」が必要です。色、形、ロゴ、パッケージ、言葉づかい、店構え、発信者の顔など。こうした独自のブランド資産(=DBA)があるから、生活者は「あれだ」と認識できます。
そして最後に、買える状態が必要です。
思い出されても、ECで見つからない。見つかっても、商品名が分かりにくい。送料が高い。容量が合わない。店頭に置いていない。こうした小さな障壁が、購買のハードルとなります。
地方ブランドは、「知っている=認知度」だけでは足りません。「思い出される」「見分けられる」「見つかる」「買える」までつなげて見なければならないのです。

想いを、選ばれ続ける仕組みに変える
地方ブランドの強みは、想いにあります。
なぜこの商品をつくるのか。なぜこの土地で続けるのか。なぜこの素材や製法にこだわるのか。なぜ次の世代に残したいのか。こうした物語は、ブランドの意味や価値をつくります。そして、それは大手ブランドには簡単に真似できない資産だと思っています。
HONEが地方ブランドに関わる理由も、ここにあります。
単に売上を上げるだけなら、もっと効率の良い市場はいくらでもあります。でも、地方には残したい文化があり、継ぎたい技術があり、次の世代に渡したい営みがあります。だからこそ、文化と経済を切り離さずに考えたいと思っています。
ただし、想いを語るだけではブランドは広がりません。
むしろ、想いが強いブランドほど、伝え方が難しくなります。語りたいことが多すぎるから。削れない背景が多すぎるから。全部大事だから、全部載せたくなります…。その結果、生活者から見ると、何を選べばいいのか分からなくなることがあります。
かといって、地方ブランドに必要なのは、想いを薄めることではありません。想いを、思い出され、見つかり、買われる仕組みに翻訳することです。文化をCEP(カテゴリーエントリーポイント=具体的なシーン)に、こだわりをDBA(=独自のブランド資産)に、地域性を売場やECの導線に翻訳することが求められます。そしてそれらを生活者が選べる形に整えていくイメージです。
自治体や支援機関にも必要な視点
これらの考え方は事業者だけでなく、自治体や支援機関にも必要な視点となります。地域産品の支援は、商品をつくって終わり、ロゴをつくって終わり、イベントに出て終わりになりがちです。しかし、本来のゴールは「つくること」ではなく、「選ばれ続ける状態をつくること」のはずです。
誰に買われているのか。どんな場面で思い出されているのか。どこで見つかっているのか。どこで買いにくくなっているのか。まずはそこを見返してみましょう。そこから、発信、商品設計、売場、EC、支援のあり方を組み直していく流れがスムーズかなと思っています。
改めてとなりますが、地方ブランドの課題は、決して「魅力がない」ことではありません。多くの場合、魅力はすでにあります。足りないのは、その魅力が選ばれるまでの接続設計です。

HONEは、地方にある想いを、選ばれ続ける仕組みに変える仕事をしたいと思っています。文化を残すために、経済をつくる。良いものを、良いもののままで終わらせない。そのために、ブランドを感覚ではなく構造で見ていきたいと思います。
次回は、ブランドが「思い出される」とはどういうことか。メンタルアベイラビリティとCEPの視点から、地方ブランドが入り込むべき生活場面について考えていきます。
HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶ地方マーケティング会社です。
日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。
地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。

▼HONEにできること
語られていない価値の「骨」を探す
商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。
現場に入り、五感を使って「骨」を磨く
戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。
手を動かしながら、「骨」を強くする
支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。
文化となる「骨格」を、未来へ残す
目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。

▼HONEの強み
01/一貫サポート
戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。
02/現場主義
デスク上、リモートワークでは見えない、地域の空気や人の温度に触れる。HONEは現地に足を運び、実際に現場の風景・人の営みに向き合いながら、これまでの現場で得た経験則を元に戦略・戦術に反映していきます。現在起こっている事実に基づく分析はもちろんのこと、解釈に現場の五感で得た気づきを重ね合わせ、実装へとつなげていきます。
03/全国実績
北は北海道、南は沖縄まで、一次産業から観光、教育、行政、ベンチャー、スタートアップ、アトツギなど、多種多様なプロジェクトに携わってきました。たくさんの地域を見てきたからこそ、それぞれの良さに気づくことができます。そして土地に根付くその事業の「らしさ」を、より鮮明に見つけることができます。全国各地で積み重ねた知見を、次の挑戦に活かします。
04/産学官連携
企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。

なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか
マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。
制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。

地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。










