【ウェビナーレポート】地方マーケティングにおける「価値の伝え方・作り方」〜【初学者向け】価値の種類から伝え方まで〜
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「マーケティングは、広告や陳列の方法を考えること」
「いまある市場でもっと商品を広めよう」
マーケティングを学び始めると、こうした「多く売るための手段」を考える知識ばかりが増えていきがちです。でも、本当のマーケティングは手段だけではありません。その前提となるのが、「価値とは何か」を理解することです。
本記事では、地域に特化した地方マーケティングを手がけるHONE代表・桜井のセミナーをもとに、「価値の伝え方・作り方」をレポートします。
地方で事業をしている方、地域を大切にした取り組みをしている方が、何から学び始めればいいのかを考えるきっかけになればと思います。後半では地域ブランドにも触れ、地域のビジネスで必要な視点も紹介します。
自分のビジネスでは、だれに、なにを、どうやって届けているか。読みながら、身近な事例に置き換えて考えてみてください。
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手段の前に、まず「目的」を考える
マーケティングの定義はシンプルです。
目的を設定し、「だれに、なにを、どうやって届けるか」を設計すること。
それがマーケティングです。近年はAIやDX、省人化などが流行っていますが、手段から入ってしまい、「補助金が出るから」「国の制度がこうなっているから」という思考になりがちです。マーケティングはあくまでも目的を達成するための道具です。まずは「誰に、何を、どうやって届けるか」を考えましょう。

ロウソクとスターバックスに学ぶ、「価値」の正体
今回のメインテーマは「価値」です。
ここでロウソクを例に考えます。ロウソクは、使い方が広がったことにより、ターゲットが増えました。
「明かりを灯す」という使い方から、「暗がりを楽しむ」間接照明的な使い方へと広がっていったのです。アロマキャンドルの誕生などで、葬儀や仏壇、ケーキ以外でも使われるようになり、ロウソクの価値が多様化していきました。ロウソクそのものは変わっていません。変わったのは、人が感じる価値だったのです。
価値は、「消費者が何に納得感を得ているか」で測ることができます。スターバックスのコーヒーの価格は一般的なコーヒーで500円ほど。セブン-イレブンのコーヒーはラージサイズで180円なので約3倍です。
もちろん味の違いもありますが、それだけで価値差を説明するのは難しいのではないでしょうか。第3の居場所と呼ばれるような、くつろげる空間まで含めて「価値」になっているのです。
ブランド | 売っているもの | 実際の価値 |
スターバックス | コーヒー | くつろぎ・第三の場所 |
セブン-イレブン | コーヒー | 早く・安く・手軽に |
価値を「伝える」だけでは売れる市場に限界があります。価値を「つくる」ことで市場を広げることができるのです。
学んだ知識と隣にある言葉を整理する
「マーケティングを学ぶにはまず何から始めればいいの?」と思う方もいるでしょう。
しかし、マーケティングを学んだだけではマーケティングができるようにはなりません。マーケティング、広告、PR、ブランディングをそれぞれ区別し、ブランディングとマーケティングの整合性を取ることが大切です。

本音と建前のあいだにある「インサイト」
本セミナーでは「インサイト」についても言及がありました。インサイトは、顕在化したニーズではなく、消費者の葛藤の中にある潜在的なニーズです。
消費者の本音や葛藤を捉えられないと、優れた商品や広告であっても共感を得られないことがあります。一方で、その葛藤を理解し、寄り添えた商品は、多くの人に支持されやすくなります。
2024年にAppleが発表した新型iPad Proのプロモーション映像の中では、楽器やゲーム機など、iPad Proに含まれる機能と重なる道具をプレス機で押しつぶす演出がありました。
これに対して、「楽器や機材が壊されて不快だ」という反応が多く寄せられました。Appleが伝えたかった「1台で何でもできる」という価値と、受け手が抱いていた不安との間の矛盾があったため、大きな反発を招いたのです。
また、2006年のマクドナルドのサラダマックも話題になりました。
みなさんはマクドナルドに行くとき、何を注文しますか?どんな気持ちで選んでいますか?マックでは、「ヘルシーなものが欲しい。」というアンケートの声をもとに、サラダを主食にした商品を販売したことがあります。
しかし、実態は売れませんでした。実は「ヘルシーさ」はそもそもマックに期待されているものではなかったのです。逆にボリューミーな商品を出したときには、「こんな商品を待っていた」という声が上がりました。
口では「ヘルシーに行きたい」と言いながら、「本当は味の濃いバーガーにかぶりつきたい。でも体に悪いし、太るし、栄養も心配…。」という消費者心理があったかもしれません。消費者はこうした葛藤を無自覚に抱えながら生きています。インサイトは、その葛藤の中にあるのです。
このように、消費者の本音や葛藤を捉えられないと、優れた商品や広告であっても共感を得られないことがあります。一方で、その葛藤を理解し、寄り添えた商品は、多くの人に支持されやすくなります。

多くの商品は、顕在化したニーズを満たすことに注力しています。しかし、それだけでは競合との差別化は難しくなります。消費者が心の中で抱える葛藤まで理解し、その両方を満たすことができれば、新しい価値を生み出すことができます。
例えば、必要な材料がセットになったミールキットは、「良いお母さんでいたい」という思いと、「料理の負担を減らしたい」という、一見相反する気持ちの両方に応えています。
一方で、先ほどのiPadの広告は、「便利さ」という価値を伝えることには成功していたものの、「創造性や仕事が機械に置き換えられてしまうのではないか」という人々の不安への配慮が十分ではありませんでした。その結果、共感よりも反発が生まれてしまったと考えられます。
このように、本音と建前、あるいは相反する気持ちの両方を理解し、どちらか一方を選ばせるのではなく、両方を満たす商品やサービスこそが、市場で高く評価されると考えています。

インサイトについては過去にセミナーを開催しました。詳細はこちらからレポートを読むことができます。
地域ブランドも「価値づくり」である
ここまで見てきたように、価値とは商品そのものではなく、「だれに、どんな意味を持つか」によって決まります。
価値を作る考え方は、地域にも当てはまります。
地域ブランドとは、単に地域の名前を売ることではありません。その地域だからこそ提供できる価値を見つけ、育て、選ばれる理由にしていくことです。
地方企業が日本のGDPを支えている
地方には、長い歴史の中で育まれてきた産業や文化、技術があります。しかし、その価値が十分に伝わらず、価格競争に巻き込まれたり、後継者不足に悩んだりする企業も少なくありません。
一方で、2019年の内閣府調査によると、日本のGDPの7割弱は、3大都市(東京・大阪・愛知)以外のエリア(=地方)が占めています。地方企業が日本の産業を支えていると言っても過言ではありません。

だからこそ必要なのは、「良いものをつくること」だけではなく、その地域だからこそ提供できる価値を見つけ、選ばれる理由として育てていくことです。これが、地域ブランドを考える出発点になります。

そこで確認すべきなのが、経営戦略・事業戦略・販売戦略のうち何が足りていないのかです。この3つはそれぞれ「どこを目指すか」「どう儲けるか」「どう売るか」を表します。現状を整理し、課題を明確にすることが、地域ならではの価値を育てる第一歩になります。
見た瞬間にわかる、それが地域ブランド
では、地域ブランドとはどんなものなのでしょうか。ここでは、土地柄や歴史、代々続く家業など、地域固有の価値を持つものと定義します。
代表的な例は、うなぎパイ、東京ばな奈、くまモン、八ツ橋、南部鉄器などです。これらは、見た瞬間に地域のブランドとして認識される状態になっています。

一方でふるさと納税のページに並んでいるお肉や果物はどうでしょうか。自治体名を隠したとき、どこの返礼品か一瞬でわかるでしょうか。

地域ブランドを構成する要素には、認知度・独自性・物語性・品質・共感性の5つがあります。「買いたいと思うシーンに入り込めているか」という視点から考えてみましょう。

認知についてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
【Q&A】回答した質問
Q. 地域ブランドについて、もしゼロイチでブランドをつくるとしたら、桜井さんは何から検討しますか?
A. GHILフレームという地理・歴史・産業・生活の4視点で考えるフレームワークから検討します。その中でも特に歴史を重視します。静岡は東海道五十三次の宿場町があります。少し腰かけて休む場所があり、通る人はみんなほっとするものを食べたかったはずです。だからこそ、お茶やお団子、とろろが名物になっているのではないでしょうか。地域に眠るエピソードこそが、ブランドを作るときの根拠材料になりました。
GHILフレームについて詳しくはこちらの記事も合わせてご覧ください。
「価値の伝え方・作り方」まとめ:価値は待つものではなく作るもの
今回のセミナーでは、「価値の伝え方と作り方」をテーマに、地域の価値やインサイト、道具としてのマーケティングといった話が展開されました。まず大切にすべきは目的です。目的をもとに、消費者が買う瞬間の状況や心に抱く葛藤に寄り添いながら価値を生み出し、届けていくこと。
それが地域を、そして日本を元気にしていくはずです。先人が地域に残してきた歴史や産業を活かし、他にはないけれど実は求められているものを、これから作り出していきましょう。
HONEインターン / 石井
地方マーケティングに強い、HONEのサービスについて
HONEでは、地方企業さまを中心に、地方マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
インターン 石井恭華
静岡県出身、大学在学中。経済学を専攻し、地域や産業をテーマにしたゼミに所属。
能登半島での復興支援や、静岡県内でのイベント運営などに関わる中で、地域の活動が「どうすれば人に届き、続いていくのか」に関心を持つ。
現在は株式会社HONEにてインターンとして、地域や企業の取り組みに関する記事を作成し発信している。












