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【セミナーレポート】地下足袋をマーケティングせよ!公開壁打ちライブ in 岡山

  • 執筆者の写真: 梨沙子 亀元
    梨沙子 亀元
  • 10月10日
  • 読了時間: 10分

更新日:11月1日

【セミナーレポート】地下足袋をマーケティングせよ!公開壁打ちライブ in 岡山

2025年10月7日、岡山県で開催された特別セミナー「地下足袋をマーケティングせよ!公開壁打ちライブ in 岡山」。


会場は、株式会社植田板金店が運営するコワーキングスペース「ひとやね」


本イベントでは、「伝統的な地下足袋を現代市場でどう売るか?」というリアルなお題に対し、マーケティングの思考法や実践的なフレームをもとに、公開形式の壁打ちで解を探る試みが行われました。


本レポートでは、イベント当日に交わされた参加者との対話や、そこから導かれた問いと回答のプロセスを中心にまとめています。


伝統と市場、感覚と論理が交差するマーケティングの現場を、ぜひ最後までご覧ください。




株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料

目次



主催者/登壇者紹介



岡部さん

主催 株式会社植田板金店 コミュニティ運営 岡部 耀平さん

株式会社植田板金店 は「人とひとがつながり、可能性がうまれる共創のバをつくる」ことをビジョンに、岡山でコワーキングスペース「ひとやね」などを展開されています。地域事業者の伴走支援やプロジェクト共創に取り組む。

株式会社ひとやね HP:https://hitoyane-cw.com



岡本さん

株式会社丸五 常務取締役 岡本幸太郎さん

岡山県倉敷市出身。1988年生まれ。中央大学卒業後、監査法人系のコンサルティング会社へ就職。その後起業やベンチャー企業にて様々な事業の立ち上げを経験。

30歳を契機に創立1919年の地下足袋などの履物や自動車部品を製造する家業へアトツギとして入る。 

趣味はランニング。岡山マラソンでは足袋シューズで完走。

株式会社丸五 HP: https://www.marugo.ne.jp/



桜井さん

株式会社HONE / Astlocal株式会社 代表 桜井 貴斗さん

「地方に骨のあるマーケティングを実装する。」をミッションに、全国の地域企業を支援。現場主義と独自フレームで、伝統と市場をつなぐマーケティング実践者。



今回のお題、「地下足袋」とは?


丸五の歴史

地下足袋はもともと、大正時代に作業用として開発された日本独自の履物です。足の形に密着する構造と、指先が分かれた「足袋型」の形状が特徴で、農作業・建設・祭りなど、現場での機動性や安定感が求められるシーンで広く使われてきました。



株式会社丸五の歩みと製品進化


地下足袋について

1919年創業。岡山・倉敷を拠点に、地下足袋や作業靴の製造を100年以上続けてきた老舗メーカーです。従来の職人向け・現場向け製品に加え、近年はカジュアル用途・健康志向に応じた製品開発にも挑戦。2025年9月には新商品「TABIN(タビン)」をMakuakeで発表されています。姿勢を整え、身体の悩みを軽減するウェルネススニーカーとして新たな価値提案に乗り出されています。


みんな真剣に聞いています


足袋の良さを伝えるのが難しい


岡本さん:履いてもらうと『あ、気持ちいい!』って皆さん反応があるんですが、履いてみないと分からないんです。足袋自体の価値をどう伝えるか、難しく感じています。


桜井さん:そもそも「足袋が欲しい」という顕在ニーズが確立できていない(ピンとこない)ところが難しい気がします。潜在ニーズ・顕在ニーズという言語化で解決できるかもしれません。



価値の言語化 潜在ニーズとは? 自分でも気づいていない「本当の欲求」


顕在・潜在ニーズ

「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の違いが語られました。


たとえば、「洋服ブラシが欲しい」は顕在ニーズ。しかしその奥にある「清潔に見られたい」「身だしなみを整えたい」という気持ちは、本人すら自覚していない潜在ニーズであることも。自分が何をしたいのか分からない状態の人は多い。そこにどう気づくかが、マーケティングの起点になります。



まずは「顧客のジョブ」に立ち返る。ニーズをジョブ理論で再定義する。


ジョブ理論

見た目や言葉で伝えにくい地下足袋の良さ。「ジョブ理論(Jobs To Be Done)」という視点でした。


これは、顧客が商品を「買う」のではなく、何かの目的を達成するために「雇う」という発想に立脚する理論です。


 特に、以下の3つのジョブ視点で考えることがポイントです。


3つのジョブ

種類

説明

タビシューズで想定された例

機能的ジョブ

実用的な目的を満たすため

歩きやすさ、疲れにくさ、膝腰への負担軽減

感情的ジョブ

気分や感情を満たすあため

自然と姿勢が良くなる安心感、身体の整いによる心地よさ

社会的ジョブ

周囲との関係・評価を高めるため

仕事に専念できる、プロフェッショナルな印象、健康意識の高い印象


「足袋シューズが雇われる状況とは、どんな時か? どんな悩みがある人か?」を会場にも問いかけ、参加者全体でジョブの言語化を行っていきました。


ジョブ理論では、人が商品やサービスを“雇用”するのは、それによって何らかの目的や役割を果たしたいからだとされます。


「歩きやすさ」や「地下足袋デザイン」ではなく、もっと深い感情的・社会的なニーズ(ジョブ)を解決している可能性があります。


  • 姿勢を直したいが、整体に通っても一時的。根本的に改善したい。

  • 身体にこれ以上努力したくない。疲れずに毎日を過ごしたい。

  • 健康には気をつかいたいが、運動はサボりたい。


「何もしていないのに、気づけば身体が整っている」という理想的な“結果”を、ユーザーに理解してもらうというアイデアが出ました。



ジョブ理論についてはこちらの記事をお読みください🙌


ジョブ理論



見た目では良さがわかりにくい「TABIN」


岡本さん:TABINは、あえて足袋とわからない見た目にしています。逆に足袋だとわかりにくいデメリットがあります。

説明すると、わかってもらえるのですがこれから店舗拡大するときに、置いてるだけでわかりにくいところが難しいです。


TABIN

新たな価値・市場の作り方


試さないと分からない課題に対して、事例が紹介されました。


視力を矯正するというメガネの役割を「目を保護する」という認知に変えてまずは試してもらうことで新たな市場が広がりました。


ree


足袋に置き換えると?


認識変容

桜井さん:これを足袋に置き換えると、新しくどんな価値を認知して欲しいか?で設計していくことが大事かもしれません。そうなった時にさっきも出た「努力しなくても」に価値を置くとどうでしょう?



「努力不要」が新たな価値に


「努力しなくても変われる状態」がユーザーにとって魅力的であるという視点です。


● 意識させない姿勢改善


姿勢改善の価値を伝える際に「意識してください」と言っても継続は困難です。

むしろ「意識しなくても姿勢が良くなっている」「履くだけで整う」というコミュニケーションは、潜在ニーズに響きます。


● 「痛みの解消」というネガティブ要因へのアプローチ


「歩きやすさ」というプラスの価値訴求だけでなく、

「足が痛くならない」

「疲れにくい」

「長時間立っても苦にならない」

といった、苦痛の除去を明確に伝えることで、より強い購買動機に繋がりそうだという議論がされました。


このような意見が出てきました。



販路・ストーリー含めた「売り方」をどのようにすればいいか?


オケージョン

岡本さん:足袋の今後の「売り方」について悩んでいます。クラウドファンディング後の販路などもどう設計していくかが難しいです。


桜井さん:売上の変数は、過去の習慣が大きく変数となると言われています。


岡本さん:たとえば、歩く習慣がある人の方が、履を買うことが多いですか?


桜井さん:そうです。なのでどんな時に履いてもらいたいか?それはどんな人か?で戦略を立てていくと良いです。


岡本さん:今日は歩くぞ!という時、ですかね。


桜井さん:都内の営業さんとか良いかもしれないですね。



「使う時間・タイミング」「それはどんな人?」で設計するオケージョン戦略


TABINの価値は、使う場面(オケージョン)において想起されることによって最大化されます。壁打ち内では以下のアイデアが出てきました。


ターゲットシーンで狙うターゲットや販売チャネルを選定する


立ち仕事・サービス業(美容師・介護士・看護師・飲食店など)

→ 「疲れない」「仕事に集中できる」「本業に専念できる」

→ BtoB向けに“福利厚生シューズ”としての導入など


旅行・テーマパーク・展示会などの長距離歩行シーン

→ 「疲れにくいからこそ、子どもとの思い出が増える」

→ 「一日中歩いても、ホテルで元気な自分がいた」


健康意識層・ウォーキング習慣ユーザー

→ Apple Watchで歩数を計測しているような人に向けて「毎日続けられる“履くだけ健康”」という提案



価格戦略と“弾力性”の考え方


価格弾力性

感情的・ブランド価値に訴求できれば → 弾力性小(値上げしても離れにくい)

機能的・代替可能な商品として認識されると → 弾力性大(値上げすると離脱しやすい)


つまり、単なる「歩きやすい靴」としてではなく、「身体の負担を減らし、生活や仕事の質を変える道具」など、TABINの意味を再定義していくことで価格弾力性を小さく設計できるのです。



地下足袋市場を広げるために必要な「3つの視点」


市場を広げるために

地下足袋型スニーカーを題材に以下の3ステップで整理できます。


  • 市場規模を知る まず、自分たちが戦う市場の大きさを調査から把握します。定量調査や既存データ、現場観察が鍵です。

    今回のセミナーでは、単なるファッション靴としてでなく、作業靴・ワークウェア市場・健康・機能性シューズ市場などと複数狙う仮説が出ました。

    その仮説をあらかじめ調査して把握するのが定量定性調査になります。

    (弊社が定量調査を推奨している理由でもあります)


  • 浸透率(ペネトレーション)を上げる どれだけ新規の人に使ってもらえるかは、「思い出されやすさ(メンタルアベイラビリティ)」と「買える場所(フィジカルアベイラビリティ)」で決まります。⇒ 旅行、立ち仕事、健康など、使われる文脈を特定するのが重要です。


  • 好意度(プレファレンス)を高める 「●●といえばTABIN」と第一想起されるブランドに。 機能だけでなく、「楽になる」「姿勢が整う」など感情価値まで伝える工夫が必要です。



まとめ


今回のセミナーでは、「地下足袋をマーケティングせよ!」というお題のもと、商品価値をどう再定義し、誰に・どの文脈で届けるべきかを多角的に掘り下げました。

会場からもたくさんの意見がチャットに届いており、参加者全員で思考する場となりました。


複数のマーケティング理論やフレームを用いたプロセスが明らかになりました。

「売り方」にとどまらず、商品開発・価格設定・流通設計・プロモーションといったマーケティング全体に必要な視点です。


なお、本レポートは当日の議論の一部を抜粋したものです。 プロダクトの状況やフェーズによって思考すべき論点は毎回異なるため、壁打ちセミナーのご活用もぜひご検討ください。

マーケティングの思考法や可能性に触れるきっかけとなれば幸いです。


地下足袋をマーケティングせよ


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当社では、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。


地方に関する知識とマーケティングの知識を使いデータ(事実)に基づき、戦略設計から実行まで行うことが特徴です。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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マーケター 亀元梨沙子











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