
静岡のおでん店に、韓国人のお客さんがたくさん来ている。
私の親戚が青葉おでん街でお店を営んでいるため、少し時間ができたらサクッと立ち寄るようにしているが、行くたびに韓国人が増えている気もする。
聞くところによると、どうやら「Instagramでバズったかららしい」という話を聞き、元の動画と、その前後の経 緯を調べてみました。
確認できたのは、韓国のテレビ番組による認知と、その後のInstagramでの紹介・転載動画でした。特定の「これ」という原因なのかどうかまでは分かっていませんが、投稿を辿ると、「おでん」とともに、店主や地元のお客さんとまったりと過ごす時間が伝わっていました。

はじめのきっかけは韓国テレビ番組。
韓国MBCの『私は一人で暮らす(나 혼자 산다)』で、俳優のイ・シオンが静岡を一人旅していた様子が放送されました。

おでんのお店では翻訳機を使って注文し、店主に冗談を伝えたりしたまったりとした放送でした。
当時の静岡県ソウル事務所長への取材記事にも、番組放送後に韓国人観光客が大きく増えたというコメントが確認できました。おでん街にどれだけの来客数が増えたのか定量的にはわかりませんでしたが、この番組が静岡の認知と来訪を後押ししたことは確かです。
流用:取材記事
その後、Instagramで拡散
2023年6月14日の「@youngsfilm」の動画で、青葉おでん街の「みすゞ」で、
店主と乾杯する様子を確認でき ました。

投稿文によると、おばあちゃんのいる店ならおいしいはず、と入ったところ、イ・シオンが番組で訪れた店だったそうです。
番組を見て目指した、と書かれているわけではありませんが、偶然入った店での楽しい体験が動画でまとめられています。
6月23日には「@omuk.official」が、この動画を出典付きで転載。日本旅行で訪れたい場所として紹介しています。
コメントには、同行者に「日本に行ったらここへ行こう」と呼びかける反応もありました。
テレビで知られた場所が、旅行者の投稿を通じて別の人にさらに拡散して届いてい き、その動画を見た人が、友人と行き先を相談する材料にもなる、という流れなのかと推察しました。
何が「行ってみたい」につながったのか。
ここからは、動画をもとにした私の考察です。
紹介されているのは、黒いおでんやお茶割り、女将との乾杯、隣にいた地元のお客さんとの交流です。料理の特徴に加えて、その店でどんな時間を過ごせるのかが具体的に伝わってくるものでした。

知らない国の小さなこじんまりした飲食店は、旅行者にとって少し勇気が必要な場所でもあると思います。
特に静岡おでん街は一見さんが入っていいか際どいお店が多く、地元民の私ですら、行きつけ以外のお店に入るには勇気がいります。
言葉は通じるのだろうか?初めてでも入っていいのだろうか?どんな雰囲気なのだろうか?などなどさまざまな不安を抱えていることもあるでしょう。
そこに、自分と同じ国の人が訪れた楽しそうな投稿を見つけて、周りのお客さんとも交流している様子に安堵する、といったことは大いにあり得るなと思いました。
Instagramの投稿には、そのお店で「何を食べられるか」と「自分もそこで楽しめそうか」の両方伝えるものでした。キャッチーかどうかだけではなく、具体性が伴っている内容を発信できているかが、行き先として選びやすい理由の一つだと感じました。
実際のコメントにも、友人などに行き先を提案する反応がありました。再生回数だけでは分からない、旅行計画との接点がありました。
来訪に必要な「モビリティ」の条件
静岡―ソウル直行便は、2023年3月26日に運航を再開しました。
今回のInstagram投稿は、その約3か月後に投稿されたものでした。さらに2025年6月には毎日2往復となっています。
増便が、おでん店の来客数をどれだけ増やしたかは分かりませんが、動画を見て興味を持った後に、静岡行きの旅行を組みやすいことはとても大切です。
認知してもらえるか?(認知変容)、投稿内容から行動変容に繋がったとして、その後の移動のしやすさも鑑みる必要があると思います。
また、いくつか調べてみると、お店によって来訪の理由は異なることもわかってきました。「静岡おでん おがわ」では、同店に通っていた&TEAMのFUMAさんのファンとして、韓国から訪れた女性が取材されています。韓国人観光客の動機は実にさまざまなものがあると感じました。
※流用:テレビ静岡の記事
誰が、何に惹かれて来たのか?を知ることから始めよう。
今回の事例を抽象化して、「有名人に来てもらえばよい」「短い動画をつくればよい」という施策に置き換えるのではなく、私が注目したいのは、訪れた人がお店で何を楽しみ、そのうち何を他の人に伝えたくなったのか?をきちんと観察しようという点です。
料理が気になったのか、店主に会いたかったのか、地元の人と飲んでみたかったのか、動機によって、何を発信すべきか?は変わってきます。
例えば、お店での交流に惹かれているなら、料理の写真と一緒に、店主の人柄やお客さんが過ごす様子を伝えたらいいと思うし、訪問前の不安が大きいのなら、注文方法や価格、営業時間、お店までの行き方を分かりやすく案内した方がいい。
地域の人にはいつもの店、いつもの乾杯であっても、旅行者にとっては、その土地を訪れる楽しみになることがあります。今回の動画には、その可能性が表れているように感じました。
地域の魅力を伝えるヒントは、訪れた人の具体的な体験と言葉の中にあると思っています。
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▼地元民と観光客が、肩を並べて語らう夜。静岡おでん街「幸多路」の魅力。【静岡県静岡市】
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