話題になる商品と選ばれ続ける商品の違いとは?面白い商品を、売れ続ける商品に変えるために必要な視点
- 6月13日
- 読了時間: 13分

新しい商品や企画は、発想が優れているほど早く・多く広がっていきます。
SNSで紹介され、共感が集まり、関係者の反応も良い。その光景を見ていると、たくさん売れそう!と感じます。
ただし、マーケティングで見るべきなのは反応の大きさだけではありません。
生活のどの場面で使われるのか。どの頻度で買われるのか。価格はその頻度に合っているのか。買いやすい場所に置かれているのか。
実際、「話題になる商品」と、「選ばれ続ける商品」は違います。
本記事では、SNSの反応、ロイヤルティ、購買頻度、メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティの視点から、面白い商品を売れ続ける商品に変えるための考え方を整理します。
一見、良い商品に見えるものほど、分解して考える必要がある
昨日、以下のユニークな商品を発見し、とても興味深い事例として記事を読んでいました。
(記事より流用) デザイン事務所torinokoとオリジナル商品の企画開発やOEM事業を展開するオールスタジアムは、子ども向け晴雨兼用傘「子供が自分でさしたくなる傘」を共同開発し、Makuakeで先行販売を開始している。猛暑化が進むなか、熱中症対策として注目される“子どもの日傘”を、遊びの延長として自然に使いたくなるプロダクトへと再設計した。
晴れた日に傘をさすと地面に影が現れ、子どもが影と遊びながら日陰の中を歩くという商品です。暑さ対策を、子どもにとっての遊びに変えている点が優れていると感じました。
AXISさんの記事でも、単なる暑熱対策用品ではなく、影で遊ぶ体験を通じて日傘を自発的に使いたくなる仕掛けとして紹介されています。
一方で、もし私がこのブランドのマーケターで「商品を売る」ということを考えると、確認すべきことは多いなと感じました。
例えばこんなことです。
子どもが地面ばかり見てしまうことで、安全面に問題はないか
影の面白さは、何回目まで続くのか
学校や保護者は、通学時の日傘利用を受け入れるのか
価格は、親が日用品として買える水準なのか
壊れたとき、もう一度買ってくれるのか
上記のように考えると、「面白い商品」と「売れ続ける商品」は別の条件で成り立っているようにも思えてきます。
商品開発をしていく上では、「発想の面白さ」だけでなく、利用場面、購買頻度、価格、流通、リピート理由などの実践的なところまで見ていく必要があります。
これらはHONEがこれまで整理してきたメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティの考え方にもつながります。
ブランドは思い出されるだけでは不十分で、実際に買いやすい状態まで設計する必要がある、というものです。
▼参考:メンタルアベイラビリティ・フィジカルアベイラビリティとは?具体的な定義と考え方を解説します
SNSで「話題になること」と「売れること」は違う
SNSで話題になっている商品を見ると、売れてそう!と思うこともあります。
投稿が伸びて、コメントがたくさんつき、共感の声が集まると、一見すると需要があるように見えるからです。
SNSで話題になることは、購買の入口にはなると思います。
ただし、反応の量だけでは、新規顧客が増えたのか、継続購買につながるのか、利益が残るのかまでは判断できません。
PwCの2024年調査では、46%の消費者がSNS上で直接商品を購入した経験があると回答。2019年の21%から大きく伸びています。

また、67%がSNSで新しいブランドを発見し、70%が購入前にレビューを確認しています。一方で、SNSは「最も信頼されていない業界」ともカテゴライズされており、購買には商品の品質、価格の納得感など、さまざまな要因が強く影響しています。
つまり、SNSで盛り上がっているように見えても、それは新規顧客が増えているのではなく、すでに関心が高い人たちがたくさん反応しているだけかもしれません。
この判断を見誤ってしまうと、商品開発やプロモーションがぶれてきます。共感されることと、買われ続けることの2つは分けて考える必要があります。
本当に必要なものは、話題にならないまま選ばれている
毎日買われる商品や、何度も使われる商品は、必ずしもSNSで話題になるわけではありません。
例えば毎日口にするような「納豆、卵、バナナ」や、消費財である「歯磨き粉、洗剤、ティッシュ、化粧水」などは、毎回感動があって選ばれているわけではありません。
多くの場合、価格が合っている、失敗しにくい、前に使って問題がなかった、近くで買える、といった理由で選ばれています。
話題になる商品は、記憶に残りますが、選ばれ続ける商品(日用品など)は、話題にはならないけれど、普段の生活で使うための条件を満たしています。
つまり生活者は、いきなりブランド名を思い出して買うのではなく、生活上の用事や場面で思い出され、「買おう」という状態になって商品が候補に入ります。
この生活の中で必要で欲しくなる条件のことを「カテゴリーエントリーポイント」と呼ばれています。
▼参考:カテゴリーエントリーポイント(CEP)とはなにか?事例、参考になる本/書籍を紹介
このきっかけがあって初めて商品が思い出され、手に取り、購入されることになります。
ロイヤルティが高いからリピートするとは限らない
リピート購買を考えるとき、ロイヤルティという言葉がよく使われます。
マーケティング領域では、主に愛着や信頼といった意味として使われる言葉ですが、ロイヤルティには2つの意味があります。
顧客ロイヤルティは、大きく分けると「態度」と「行動」で捉えることができます。

【行動的ロイヤルティ】
行動的なロイヤルティとは、特定の企業やブランドの商品・サービスを継続的に購入・利用している状態のこと。
例えば「昨年そのストアを〇回利用した」「お気に入りのスーパーで毎月〇円以上購入している」といった継続利用の実績が行動するロイヤルティの具体例。感情的なつながりや昂りがなくても行動として続けていることがあれば、行動的ロイヤリティが高い状態だと言える。
【態度的ロイヤルティ】
態度的なロイヤルティとは、特定の企業やブランドに対して顧客が感じる愛着・思い入れ・信頼など心理面のこと。商品やサービスだけでなくブランド全体に好意を持ち、「このブランドが好きだ」「このブランドを使っていると誇らしい」と感じている状態。
例えば、「あのブランドの服を着ているとな気分になる」とか「お気に入りの車ブランドのことを考えるとワクワクする」といった感情は幸せなロイヤルティの具体例です。
整理すると、
態度的ロイヤルティが高いとは、そのブランドに好意や愛着がある状態
行動的ロイヤルティが高いとは、実際に繰り返し買っている状態
この2つは同時に高まることもあれば、どちらか一方だけが高まることもあります。
「好きだけれど、生活上は特段必要ではない商品(態度的ロイヤルティだけ高い状態)」
好きというほどではないけれど、必要だから買っている商品(行動的ロイヤルティだけ高い状態)
この違いを見落としてしまうと、ロイヤルティ施策をすれば売上が伸びる、という雑な理解になってしまいます。
HONEの過去記事でも、ロイヤルティ施策だけでは売上が伸びにくいことを整理しています。ブランドの成長には、少数の熱狂的な顧客だけでなく、新規顧客やライトユーザーへの到達が必要となります。
▼参考:『戦略ごっこ』『確率思考の戦略論』を地方ビジネスに実装したウェビナー
こだわりがないから、同じ商品を買い続けることもある
ではこだわりがあるからリピートするのか?というとそういったわけでもありません。
むしろこだわりがないから同じ商品を買い続けることがあります。
よく知らない
詳しく比較したいわけではない
失敗したくない
前に使って問題がなかった
売り場で見つけやすい
価格も高すぎない
その結果、同じ商品で済ませることになります。

上記のようにすべての商品に、強い愛着や深い理解が必要なわけではありません。生活者は、毎回あらゆる商品を真剣に比較しているわけではないからです。
例えば、これは私自身の経験なのですが、化粧水には特にこだわりがないから無印良品の商品を使っています。
「特にこだわりがない→失敗しなさそうな無難で価格も手頃な無印でいいや」という思考回路となっています。無印良品はスキンケアをジェンダーレス、エイジレス設計にしているため、その手軽さ重視の選択肢として無印を選んでいます。
「男性向けスキンケア」として強い世界観を打ち出すというより、売り場、価格、見た目の中立性、選びやすさによって、深く考えずに買える状態をつくっているように見えます。
好きだから買うのではなく、知識がなくよく知らないから「同じもので済ませる」。特に不満がないから変えない。買いやすいからずっと買っている。ここにリピートの本質があると思っています。
面白い商品を、売れ続ける商品に変えるために確認したいこと
今回の記事では「面白い商品」と「売れ続ける商品」では条件が違うことについてまとめてみました。
SNSで話題になる面白い商品だとしても、以下が満たされていなければ商品を売れ続けることはできないと思っています。
まず、最初に誰が買うのか
その人は、どの場面で使うのか
一度使ったあと、次に使う理由はあるか
価格は、利用頻度に合っているのか
買える場所は十分にあるか
使う場所、保管する場所、持ち運ぶ理由はあるか
面白さ・ユニークさが薄れたあとも、機能や便利さは魅力的か
既存ファンの反応だけでなく、新規顧客にも届いているのか
ここまで見て、はじめて商品としての可能性が見えてきます。
HONEでは、地方ブランドの商品開発においても、良いものをつくるだけでなく、誰に、どんな価値を、どの場面で届けるのかを整理することを重視しています。
新商品開発では、発想やストーリーだけでなく、顧客が望む価値、自社が提供できる価値、競合との差分を見極める必要があります。
▼参考:「地方ブランド」のための新商品開発マニュアルをつくりました。
ユニークな発想を否定しているわけではなく、その発想を一度きりの反応で終わらせず、購買構造に落とし込むことが大切である、ということです。
当に売れ続ける商品をつくるための出発点として、参考になれば幸いです。
HONEは地域に根ざし、現場に足を運ぶ地方マーケティング会社です。
日本の地方には、魅力的な商品・サービスがたくさんあります。
地方に根ざしたブランドの志や文化、人々の誇りや営み。HONEはそうした人たちの想いを価値に変えるべく、現地に出向いてきました。 私たちは、文化と経済の「骨」を設計し、地域の「らしさ」を未来へつなげる仕組みを育てます。 論語と算盤。想いと仕組み。美学と実行力。 その両立を、マーケティングの力で実装していきます。

▼HONEにできること
語られていない価値の「骨」を探す
商品や地域の中にある「想い」や「背景」は、まだ言語化されていないだけかもしれない。 それらを丁寧にすくい上げ、ブランドの芯として翻訳します。 見落とされがちな隠れた価値に役割を与えることが、事業の骨格をつくるはじまりです。
現場に入り、五感を使って「骨」を磨く
戦略も仕組みも、現場を歩き、対話することから始まります。 地形、歴史、空気、人の言葉やまなざし。デスクリサーチでは捉えきれない情報を五感で受け取り、定量と定性、論理と情緒、ロマンとそろばんを掛け合わせて、設計に落とし込みます。
手を動かしながら、「骨」を強くする
支援とは、プランを出して終わりではありません。 現場に入り、泥臭く、時に失敗しながら共につくりあげていきます。 頭で考えて、手足を動かす中で生まれる「実感」こそが、骨を太くし、しなやかに持続する構造を育てていきます。
文化となる「骨格」を、未来へ残す
目指すのは、ただ売ることではありません。 地域に根ざした文化や営みに芯を通し、事業として持続可能なかたちに育てていくこと。短期的な成果ではなく、関わる人たちの誇りとなり、語り継がれていく仕組みをデザインします。 HONEは、経済と文化をつなぐ骨を共につくり、未来へと残していきます。

▼HONEの強み
01/一貫サポート
戦略設計から実行〜検証まで。経営課題の整理から、現場を動かす具体的な仕組みづくりまでを、一貫して支援します。リサーチ・企画・実装・振り返りのすべてに伴走し、商品・サービスの価値を再定義しながら、現場に根づく事業を共につくります。目指すのは、短期的な成果だけでなく、文化が息づき、長く続く事業と地域のかたちです。
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03/全国実績
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04/産学官連携
企業・教育機関・行政と手を取り合い、対話を重ねながらプロジェクトを推進しています。 単なる連携にとどまらず、それぞれの立場が持つ知見や資源を持ち寄り、地域に根ざして実装していくこと。 現場での実践と、学びの場での理論、そして制度や仕組みをつなぐ橋渡しとして、多様なセクターの信頼を得ながら取り組みを展開しています。

なぜ今、“地方”でマーケティングが必要なのか
マーケティングという言葉には、しばしば「スケールする」「売上を伸ばす」といったイメージが付きまといます。しかし、地方において本当に必要なのは、そうした直線的な成長だけではありません。人口減少、担い手不足、そしてインフラや情報環境の未整備。多くの地域が、さまざまな制約の中で日々の営みを続けています。
制約が多いからこそ、その土地に根ざした価値を継続し、文化や人々の想いを循環させていくための工夫が欠かせません。マーケティングの論理をそのまま持ち込むのではなく、人肌を大切に、想いを大切に、未来へとつなげていく。実装力と創造力を備えた「地方のマーケティング」が必要です。

地方に必要なのは、「地域理解」
こうした現場においてまず必要なのは、「何をどう売るか」よりも先に「この地域には何があるのか」「何を残していきたいのか」を知っていく姿勢。つまり「地域理解」です。ブランド構築の土台を固めるには各レイヤーごとに把握すべきポイントを理解することが重要です。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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【記事を書いた人】

株式会社HONE
代表取締役 桜井貴斗
札幌生まれ、静岡育ち。 大学卒業後、大手求人メディア会社で営業ののち、同社の新規事業の立ち上げに携わる。 2021年独立。クライアントのマーケティングやブランディングの支援、マーケターのためのコミュニティ運営に従事。













