
2026年7月1日、日々全国の地域に足を運び、人と地域のつながりから新しい可能性を生み出している株式会社WHEREのみなさんを迎え、車座集会を開催しました。
地域でマーケティングに携わっていると、成果だけでは測れない価値観に出会うことがあります。売上の先にある地域の豊かさとは何なのか。本当に残したいものは何なのか。
今回の車座集会では、「地域づくりのその先に あるもの」「都心の副業人材と地域企業の関わり方」「道徳と経済の両立」といった、正解のない問いが交わされました。現場で地域と向き合う人たちだからこそ語れる言葉には、一つひとつに重みがあります。
この記事では、その場で感じた空気とともに、地域マーケティングの視点から印象に残った学びを振り返ります。
株式会社WHEREについて
株式会社WHEREは、東京を拠点に全国各地で地域プロデュースを手がける会社です。
「誰もが心に豊かさを持つ世界を」をVisionに、「地域と人のつながりに新しい可能性を創出する」をMissionに掲げ、地域メディア「LOCAL LETTER」、地域経済活性化カンファレンス「SHARE by WHERE」、地域活性に特化した人材育成事業「WHERE ACADEMY」を展開しています。
創業のきっかけは、代表・平林和樹さんが出身地である長野県で、「暮らしには満足しているのに、仕事は収入を基準に選ばざるを得ない」という現実を目の当たりにしたことでした。
収入はとても大事です。しかしそれに加えて「誰のために、何のために仕事をするのか。」を自分で選べたら仕事の時間も豊かになる。平林さんはそう思っているそうです。
その後、「地域に何が残るのか」という問いを受け、「地域創生」という言葉ではなく、「人・事業・お金を残す」ことを大切にするようになったといいます。一人ひとりの挑戦を増やすことが、結果として地域の豊かさにつながる。そんな思想のもと、全国で実践を続けています。
▼WHERE公式サイト
地方で働く泥臭さ、社会性・経済性の両立の難しさ

今回は、WHEREさんのメンバー4名とHONEのメンバー、地域に根差して働く企業のみなさんが集まり、「地方で働く泥臭さと、社会性・経済性の両立」をテーマにリアルを共有しました。
正解のない問いに対するヒントを得たり、視座を引き上げて全体を俯瞰したり、同じ志を持つ仲間から勇気をもらったりできる機会となりました。
議論した大きなテーマは、
副業人材と地域企業のマッチング
道徳と経済の落としどころ
地域に何を残すのか
の3点です。それぞれ、当日の議論をダイジェストでお届けします。
副業人材と地域が噛み合う瞬間はどこにあるのか
東京を拠点とするWHEREと、静岡を拠点とするHONE。その両者の間で大きなテーマとなったのが、「副業で地域に関わりたい人」と「地域企業」の関係でした。
地域の企業では、人柄や自社のカルチャーに合うかどうか、一緒に思い悩んでくれるかを重視する声が多く聞かれました。そのため、副業人材を受け入れる際も、単純にスキルだけで判断するわけではありません。
私が特に印象に残ったのは、「どんな人と一緒に働きたいか」という話です 。

地域の良い部分だけではなく、思うように進まないことや泥臭い現場も含めて、一緒に手を動かしてくれる人。一部分だけを切り取るのではなく、地域の仕事は、人との関係づくりに時間がかかったり、現場に足を運び続けたり、地道な積み重ねが求められます。
だからこそ、求められていたのは「片手間で関わる人」ではなく、地域のリアルを受け止め、清濁併せ呑んで伴走してくれる人でした。
受け入れる企業の想いとは
静岡県の場合、かつて徳川家康公の時代に職人が城下町近くに集められたことから、今もなお、ものづくりを営む中小企業が数多くあります。総務省の令和2年国勢調査によると、静岡県の産業別就業者数は製造業が25.0%と最も高い割合です。
参加者として参加した静岡の製造業の皆さんからは以下のようなコメントをいただきました。
製造業では現場一筋で働いてきた人がほとんどのため、リモートで働く人が何をしているのか、どんな待遇なのかが理解しにくいという面もあるそうです。それでも社長としては、営業や事務だけでなくみんなに関わってもらいたいという想いから、対面の機会には一緒にご飯を食べるなどして一体感をつくっているとか。社内の人がどう捉えるかにも、気を配る必要があります。
地域の人材が求めること
副業の人に求められるスキルとして、今回の座談会では次のような人材が挙がりました。
自分がやり切れないことや整理できないことを補完してくれる人
業界や地域について理解がある人
全般的なスキルを持ちつつ、専門性も持っている人
そもそも、なぜ「地域に関わりたい」と考える人が増えているのでしょうか。
WHERE代表の平林さんは、東京で大企業などで経験を積み、高いスキルを身につけた一方で、「このまま組織の一部の業務だけで働き続けていいのだろうか」「自分にしかできない仕事がしたい」と感じる人が少なくないと話してくれました。
まちのために価値を生み出し、自分で手を動かしている「手触り感」が重視されるのです。地域を盛り上げたい経営者と、何かしたいと考えている人。両者をどうつなぐかが鍵になっています。

道徳と経済、落としどころをどうつけるか
「道徳と経済のバランス」についても、リアルな会話が交わされました。道徳だけを取れば社会にとって良いことをしている実感はあっても、継続するためのお金が入ってこない。
経済だけに重きを置けば、短期的な成果に留まってしまう。地域はロングタームで考えるものだからこそ、どういう意思決定をするかは常に迷うところです。
参加者の中には、道徳は社長、経済は社員が担うというように役割を分けているという声もありました。いいことを積み重ねていくと信頼は溜まっていきますが、お金はなかなか貯まりません。
売上をつくるプロセスも同時につくることで、 事業がようやく形になっていきます。バランスを取るには、対話の中でその都度落としどころを見つけていくしかないのかもしれません。

お酒を酌み交わし、打ち解ける。
あっという間の2時間。「まだまだ話し足りない」「もっと聞きたい」というリクエストもあったため、そのまま懇親会でも地域を話題にした話は続きました。

私が特に印象に残っているのは、次の3つです。
1つ目は、地域では職種を横断して業務にあたっている人が多いという話です。営業だけでなく、採用活動や企画も担うといった働き方です。全体が見える点や得意なことを様々な場面で活かせる点に、「職種に囚われない仕事」の面白さを感じました。
2つ目は、おせっかいの話です。「おせっかいやってます!」という方は、イベントを開催したときには、人柄や雰囲気、普段の活動から合いそうな人を探し、引き合わせているそうです。1度参加した人が次の開催日には知り合いと一緒に来るようになり、新規もリピーターも集まるイベントになっているとのことでした。人と人を繋ぐ役割は、光が当たることは少ないけれど、間違いなく必要であり、最終的な成果につながっているのだと感じました。
3つ目は、「単純化するから、わからなくなってしまう」という話です。私が大学で学んでいる経済学は多くの場面で、いくつもの仮定を重ねて一つの式やグラフに落とし込む「モデル化」を行います。人に伝える際には、単純化した方がわかりやすいこともあるでしょう。しかし、答えのないものを自分の中で整理し理解するためには、複雑さをそのまま受け入れる頭のスペースが必要なのだと感じました。
あわせて読みたい!
▼『複雑化の教育論』教育とは?成熟とは?知性とは?教育をさせるすべての人に贈る希望の書【後編】
地域に何を残したいか、正解のない問いに向き合う。

道徳と経済、正解のない問いを前に、それぞれが自分なりの落としどころを探しながら地域と向き合っている。そんな姿を、今回の座談会を通して垣間見ることができました。
地域の豊かさとは何か。それは、きっと一つの答えに単純化できるものではないのだと思います。売上という数字だけでも、社会に良いことをしているという実感だけでも足りない。
その両方の間で揺れながら、対話を重ね、その都度の落としどころを見つけていく。そんな複雑さを複雑なまま抱え続けることこそが、地域で働くということなのかもしれません。
まちのおせっかいさんのように、縁の下で人と人をつなぐ存在。職種を横断しながら、目の前の課題に泥臭く向き合う人たち。今回出会った方々の姿は、どれも「地域に何を残したいか」という問いへの、それぞれの答えそのものだったように思います。
地域に関わりたいと考えるみなさんにとって、この記事が、自分なりの「残したいもの」を考えるきっかけになれば嬉しいです。
HONEインターン/森・石井
ほねろぐとは
AIの急速な台頭により、私たちの世界は、目紛しい変化を遂げています。効率化が進むその影で、古きよき日本の文化や風景、人との繋がりが失われつつあるのも、悲しい現実です。
そんな時代だからこそ、我々株式会社HONEは地方に足を運び、先人た ちが紡いできた伝統や、未来に残したい景色を記録します。
いつのまにか、地方の「ほんと」の姿が見えてくる。
町の暮らし。人々の想い。仕事の姿勢。
忙しない日常で忘れ去られた豊かさが、そこには息づいています。
気づけば、地方が近くなる。
現場でしか得られない骨太な体験を、お届けしていきます。
株式会社HONEについて

HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私 たちのやり方です。
学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。
自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。
誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。





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