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【レポート】売れる商品をつくるマーケティング実戦プログラム〜第5回 マーケティング戦略プラン策定編~

  • 執筆者の写真: 石井 恭華
    石井 恭華
  • 5 日前
  • 読了時間: 11分

更新日:4 日前

売れる商品をつくるマーケティング実戦プログラム~第5回 マーケティング戦略プラン策定編~

2025年秋より静岡市コ・クリエーションスペース「コクリ」にて開催されている、全6回の「売れる商品をつくるマーケティング実戦プログラム」。


既に商品やサービスを展開している事業者を対象に、弊社代表・桜井のフィードバックを受けながら、HONEが地方企業支援で培ったフレームワークを用いて実戦的にマーケティングを学べる場となります。


12月4日に開催された第5回の講座では、ブランドコンセプトを明確にし、それを顧客の行動につながるシーン設計へ落とし込んでいきました。本記事では、セミナーで得られた気づきや学びをレポートします。



株式会社HONEでは過去のセミナー資料、お役立ち資料、会社紹介資料がダウンロードできます。


セミナー資料


前回の学びを再確認:ブランドが失敗する理由とは?


なぜバルミューダのブランドは毀損したのか?
投影資料より

セミナーはまず、前回の内容の振り返りから始まりました。

前回の振り返り内容は主に3点です。


  • バルミューダに学ぶ“ブランド毀損”の落とし穴

  • コンセプト構文(主語×目的×役割)の基礎

  • 「○○×○○」で魅力が伝わる2語ルールとは



バルミューダに学ぶブランド毀損の落とし穴


バルミューダは2003年に創業され、2011年頃には高級家電で大成功したブランドです。そして、2021年11月にはバルミューダフォンを発表し、スマホ事業に参入しました。


しかし、既に完成したスマホ市場では差別化が難しく、「価格が性能に見合わない」という声も挙がり、2023年5月には事業を撤退することとなりました。この事例から、ブランドを守るためには以下のようなことが大切であるとわかります。


  • 王者がいるカテゴリーに参入しない

  • カテゴリーユーザーに満たすPOP/PODを見誤らない

  • ユーザーとならない人の心象も悪くしない・傷つけない


▼POP・PODについてはこちらの記事をご覧ください。




コンセプト構文(主語×目的×役割)の基礎


(主語)が(目的)するために(役割)を担う
コンセプト構文(流用:コンセプトの教科書より)

ブランドのコンセプトは「主語・目的・役割」の構文に沿って言語化していきます。


  • 主語:ターゲットのこと(誰が自分たちのブランドを利用するのか)

  • 目的:どんな目的を達成したいのか(その目的達成のために自分たちのブランドを利用する)

  • 役割:ターゲットが目的達成をする際、自分たちはどんな役割を担うのか



「○○×○○」で魅力が伝わる2語ルールとは


英単語を2つ組み合わせれば、世界のあらゆることは記述できる(という欧米的な考え方)

2つのキーワードで自分のブランドを表現する2語ルールを使い表現していきます。

「○○×○○」の形で表すもので、参加者の方は「デスクをカフェに」、「静かなのに尖った」といったコンセプトを考えていました。


2語ルールには、次の5つの語法があります。


  1. 提案語法:AをBに

  2. メタファー法:AみたいなB

  3. 反転法:Aの反対はB

  4. スライド法:A+B

  5. 矛盾語法:AなのにB


コンセプトを定め、コピーに落とし込み、ブランド全体へ反映していく。これが基本の流れとなっています。



ブランドコンセプトは「判断基準」ー言葉を磨く4つの条件


今回のセミナーは、行政、製造、小売、地域支援など多様な立場の方が参加しました。

参加者はそれぞれが考えてきたブランドコンセプトをブラッシュアップしていきます。

ここで紹介されたのが、ブランドコンセプトをつくる上で重要な「4つの条件」です。


  1. 「顧客視点」で書けているか

  2. 「ならでは」の発想はあるか

  3. 「スケール」は見込めるか

  4. 「シンプル」な言葉になっているか



コンセプトは響きの良い言葉ではなく、判断基準であり、顧客が価格に納得するための土台であるという点が強調されました。


▼コンセプト策定についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。




想起される瞬間を作る


今回の中心テーマが、カテゴリーエントリーポイント(CEP)。

CEPとは、顧客がそのカテゴリーを思い浮かべるきっかけやシーンのことです。



ハーゲンダッツの「食べられる瞬間」に学ぶCEP設計


例として、ハーゲンダッツのオケージョンを見てみましょう。


  • 「食事の後にデザートを食べたい時」

  • 「一日の終わりにリラックスしたい時」

  • 「少し贅沢をしたい気分の時」

  • 「ストレスを感じて落ち込んだ時」


ハーゲンダッツのオケージョンと桜井さん

このような心の動きがCEPです。


他のブランドが入らない隙間を狙いつつ、スケールも考慮して、どんなシーンで想起して欲しいのかを考えていきます。複数のCEPを持つということは、新規顧客の入り口が増えるということです。



サウナ寸又峡の事例にみる「新規」と「リピート」の設計差


打ち手であるCEPが決まったら、浸透率(顧客数)、ロイヤルティ(購入頻度/利用額)と合わせて考えていきます。


サウナ寸又峡の事例では、新規で数を取るべき顧客と、リピートを取るべき顧客が異なるという話もあり、印象に残っています。異なる理由はそれぞれCEPが異なるからです。


  • 新規:非日常空間を味わいたいカップル

  • リピート:サウナ好き


サウナ寸又峡の例
投影資料より

これはマーケティングのターゲット選定につながるため、CEPは中小企業なら3〜6個、多い方が良いとされています。



天使と悪魔で読み解く顧客心理


CEP設計の前段階として、顧客の頭の中にある葛藤を整理するオルタネイトモデルが取り上げられました。


▼先程のサウナ寸又峡の例


  • きっかけ(状況):混み合っているサウナ施設を体験し、利用を敬遠してしまう

  • 欲求(インサイト):仲間・パートナーとの時間を大切にする余裕が欲しい。余白の時間をつくりたい

  • 抑圧:車で山道を行くのが面倒、サウナの使い方がわからない(ストーブの使い方が不安)

  • 行動:車で数時間かけて寸又峡サウナに来てもらう(サウナの目的化)

  • 報酬:最高のサウナ体験を味わえる(活力がもらえる・絆が強くなる・リラックスできる)


ここで欲求と抑圧は、天使と悪魔のように戦っています。

マーケティングの役割は、顧客に報酬をイメージさせることにより「天使が勝つ設計」をつくり、顧客の行動を最大化することです。


サウナ寸又峡のオルタネイトモデル
投影資料より

モスバーガーのアボカドバーガーに学ぶ顧客インサイトの捉え方


インサイトにうまくアプローチしたのが、桜井さんも大好きなモスバーガーから発売された「アボカドバーガー」です。


期間限定で販売されるアボカドバーガーは、女性や健康志向の高い層に人気があります。今回は24年販売のものと比べてパティの量が減らされている。これにより価格が下がりましたが、狙いはそれだけではありません。“ハンバーガーにかぶりつきたい”という女性の願いをかなえるためでもあったのです。「女性がハンバーガーを頬張る」というコンセプトで、“かぶりつく”体験をしやすくしました。



オルタネイトモデル
投影資料より

行動は生活習慣の中で決まる。競合は「同じシーン」にいる


人の行動は、良い商品だからではなく、「既存の生活習慣」の中で決まります。

例えば、毎日コンビニで買い物をする人にとっては、「コンビニで買えること」自体が価値になる場合があります。また、競合は同じカテゴリーの商品だけでなく、同じシーンで選ばれる代替行動も含まれるという視点が新鮮でした。


桜井さんはCEPを考える参加者に対して、次のように声を掛けました。


  • 「現状把握も大切」

  • 「いかに習慣に入り込むか」



現状把握の重要性


こちらは産業給食を提供している方へのフィードバックです。この方はターゲット選定に必要な情報が十分に集まっていない現状がありました。そこで紹介されたのが、freeasy(フリージー)というツールです。


1回500円から24時間365日いつでも実施が可能なアンケートツールです。例えばお箸に関するアンケートでは、購入のタイミングと選ぶときのポイントを質問することで、CEPを把握することができます。


  • 壊れたり傷んだりした時に買う人が一番多い→一番のCEP

  • 壊れたり傷んだりするときに買う人は、持ちやすさや使いやすさで選ぶ

  • 気に入った箸を見つけた時に買う人は、デザインで選ぶ


これらのことから、何が価値かがわかり、ライバルを把握して、ターゲットやオケージョン(機会)を決めることができます。



CEPの探し方:W’sフレームワークを使ったシーン発見と調査設計のポイント


続いて、CEPを見つけるための手法として、W’sフレームワーク(6W1H)が紹介されました。W’sフレームワークは、顧客へのインタビューの視点出しにも使えます。


ree

  • Why

  • When

  • Where

  • While

  • With(for Whom)

  • With What

  • How(Feeling)


この7つの切り口で質問を投げかけ、消費者がカテゴリーを想起する様々なシチュエーションを漏れなく整理します。


7つの質問に沿って発想を広げていくことで、消費者の特定のカテゴリーやブランドを想起する具体的な文脈(CEP候補)を洗い出すことができます。このフレームワークを活用することで、自社ブランドと顧客の行動文脈を結びつける具体的なCEPを発見し、マーケティング戦略に活かすことが可能になります。


それぞれが意味する内容は次の通りです。

項目

補足

Why(なぜ)

顧客はなぜそのカテゴリーの商品・サービスを使うのか?どんな目的・ゴールを達成したいのか。

When(いつ)

その商品カテゴリーを購入・使用するのはいつか?(時間帯や曜日、週・月・季節のタイミング、平日か休日か等)。

Where(どこで)

そのカテゴリーの商品・サービスはどこで使用されることが多いか?(利用シーンとなる場所)。

While(どんな時に)

どんな行動をしている最中またはその前後に、そのカテゴリーのニーズが生まれるか?

With/for Whom(誰と・誰のために)

誰が購入し、誰が利用するのか?利用する時に一緒にいる人はいるか?あるいは誰かのために使うのか?

With What(何と一緒に)

そのカテゴリーの商品・サービスと一緒に使われる他のカテゴリーはあるか?もしそれが使えない場合、代わりに何で対応するか?

How (Feeling)(どんな気分で)

利用する前はどんな気分や感情か?利用後にはどんな風に気分が変わるか?利用中にはどんな感情を抱くか?


▼こちらの記事もぜひ合わせてご覧ください。




事例で学ぶCEP設計:福岡県柳川市「お舟で○○」シリーズに見る行動文脈のつくり方


HONEがご支援している福岡県柳川市の事例も出ました。柳川市では約900mのお堀を下りながら、舟の上で朝食を食べられます。川下りが有名な柳川は、お舟を何かと掛け合わせることで可能性が広がっていきそうです。


▼桜井さんが柳川を訪れた際の記事もあるので気になる方はぜひ



▼実際のワークショップレポート記事はこちら




まとめ:顧客の気持ちと事業の意図を近づけるために


今回のセミナーでは、単なるノウハウとしてのマーケティングではなく、「顧客の頭の中を理解し、行動を起こす仕組みをつくる」ための実践的な思考法が示され、個々の事業に向き合いました。


特に印象的だったのは次のようなポイントです。


  • 顧客の生活文脈を深く理解すること

  • コンセプトは意思決定の基準になるから、「かっこいい」よりも「わかりやすい」(伝わる)

  • CEP(カテゴリーエントリーポイント)という入り口を複数持つことで、別の顧客とも接点が持てること

  • 行動は過去の習慣や利用経験によって強く左右されるため、顧客の日常にこちらが寄り添う必要があること


セミナーに参加していた方々は、それぞれ異なる業界や課題であるにもかかわらず、共通して、「ブランドの価値を『選ばれる理由』にするためにはどうすればよいか」という問いに向き合っていました。


桜井さんの言葉や参加者の様子から、現場の大切さに触れ、マーケティングは人の感情と行動に寄り添うものなのだと実感しました。


顧客がどんな体験を求めているのかと事業として何を実現したいのか。

その2つを行き来しながら、仮説を立て、具体的なシーンに落とし込んでいく。こうした積み重ねがブランドを強くしていくのだとわかりました。


次回以降は今回のコンセプトやCEPをもとに、4P(商品・価格・流通・広告)へとつなげていきます。ブランドが形作られていく過程を間近で見られ、これからがますます楽しみになる回でした。



HONEのサービスについて


HONEでは、地方企業さまを中心に、マーケティング・ブランド戦略の伴走支援を行なっています。事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。


HONEの流儀

大切にしている価値観は「現場に足を運ぶこと」です。土地の空気にふれ、人の声に耳を傾けることから始めるのが、私たちのやり方です。


学びや知恵は、ためらわずに分かち合います。自分の中だけで完結させず、誰かの力になるなら、惜しまず届けたいと思っています。


誰か一人の勝ちではなく、関わるすべての人にとって少しでも良い方向に向くべく、尽力します。地域の未来にとって、本当に意味のある選択をともに考え、かたちにしていきます。



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最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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株式会社HONE

インターン 石井恭華


静岡県出身、大学在学中。経済学を専攻し、地域や産業をテーマにしたゼミに所属。

能登半島での復興支援や、静岡県内でのイベント運営などに関わる中で、地域の活動が「どうすれば人に届き、続いていくのか」に関心を持つ。

現在は株式会社HONEにてインターンとして、地域や企業の取り組みを伝える視点を学びながら活動している。

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